QUICPayは各イシュア事業者の利用促進ツールに徹する――このスタンスを極論すれば、JCB以外のイシュア事業者がJCB以外のブランドカードにおいてQUICPay対応することも可能だということだ。iDと違い、QUICPayはおサイフケータイ利用時の「ブランド手数料」の獲得も重視していないという。だとしたら、JCBはいったいどこで利益を得るのか。
「すごい遠回りになってしまうのですが、クレジットカード業界というのは個社の利益と業界の利益の両方を考えないとビジネスが成り立たない文化なんです。クレジットカード市場そのものが、消費市場全体の10%弱しかない。まずはそこを広げないと、個社のビジネスはあり得ないという考え方をしています。
我々としてはQUICPay事業単体で儲からなくてもいい。このサービスを通じて少額決済市場を中心にクレジットカード利用が広がれば、それは結果的にJCBのビジネスをも広げます。『業界全体の利益は当社の利益にもなる』という考え方を持っています」(青木氏)
「そういうと、何だかきれいごとのようですが(笑)。でも実際、クレジットカード業界の仕組みは今もそうなっているんですよ。例えば、加盟店にある決済端末はどこかの幹事会社がコスト負担をして置いていますが、すべてのクレジットカードが使える。JCBしか使えないお店を増やしても、ユーザーと加盟店のどちらも喜びません。業界全体がそういう構造なんです」(吉田氏)
もちろん、JCBが設置した決済端末を他社が使えば、手数料は支払われる。だがそれは「非常に微々たる金額。(他社カードを)何百万回利用してもらってペイするかどうかという程度」(青木氏)だという。
「はっきり言ってしまいますと、少額決済市場は儲からないのですよ。確実に儲からない。少額決済市場でクレジットカードを使いやすくするという目的でQUICPayを普及させていきますが、それで儲かるわけではないのです。赤字にはならないかもしれませんが、莫大な黒字にはならない。少額決済市場が仮に現状の2倍になったとしてもこれは変わりません。
我々が狙うのは、QUICPayによる(親カードの)メインカード化と、少額決済でクレジットカード利用に慣れていただくという点です。生活全体で現金利用を減らして、デパートなどに行った時には(高額決済で)是非ともクレジットカードで支払いをしていただきたい」(青木氏)
青木氏はQUICPayについて「カード会社の、カード会社による、カード会社のための少額決済システム」と話す。その言葉の背景には、クレジットカード業界のビジネスと歴史を知り尽くしたJCBならではの思いがあるのは間違いない。
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