ITmedia ビジネスオンライン

連載

Interview:

鉄道サービスとしての高い完成度。JR西日本「ICOCA」 (2/2)

2006年03月24日 14時40分 更新
前のページへ 1|2       

新たな領域としてのICOCA電子マネー

 ICOCAは当初、乗車券・定期券サービスからスタートしたが、昨年10月から電子マネーサービスも始まっている。現在はJR西日本のグループ会社が運営するコンビニエンスストア「ハートイン」と「デイリーイン」を中心に、18駅40店舗で導入されている。

 「まだサービス開始から半年ほどしか経過しておりませんし、ICOCAカードを使えるという点からも、今のところ店舗展開は駅ナカを中心に考えています」(山道氏)

 ICOCA電子マネーはサービス開始初期の段階にあり、Suica電子マネーのように積極的に駅上(注:駅ビルなどへの対応)や駅周辺まで対応店舗を拡大するフェーズには至っていない。しかし、将来の展望としてはキャッシュレス決済市場の拡大に期待しているという。

 「その際に我々の強みになるのは、駅という『場所』と、レールという『ネットワーク』を保有していることです。今後の(成長)戦略としては、Suica電子マネーがよい参考例になると考えています」(山道氏)

 一足早く駅ナカから駅上・駅周辺を制したSuica電子マネーは、利用率の高さにおいて他の電子マネーやクレジット決済サービスをリードしている。ICOCA電子マネーも同様に、公共交通インフラを所有することが将来に向けた大きな可能性と言える。

 一方、SuicaとICOCAはプリペイド乗車券について相互利用が実現しているが(2004年4月27日の記事参照)、電子マネー部分の相互利用は実現していない。この点について山道氏は、「システムやルールを調整している段階」(山道氏)と話す。

 「Suicaとの関係でいうと、(JRグループの)乗車券や電子マネーは地域で分かれていますから、まったく競合する関係にならない。むしろ相互利用を進めることが、お互いのお客様に対する利便性に繋がります」(山道氏)

PiTaPa相互利用と異業種連携の可能性

 FeliCaを使った公共交通サービスで、関東よりも関西の方が一歩進んでいるのが、JRと他の鉄道会社との相互利用サービスだ。関東では今年度、SuicaとPASMOとの相互利用が予定されているが、関西ではJR西日本のICOCAとスルッとKANSAIのPiTaPaの相互利用が今年1月から始まっている。

 「(スルッとKANSAIとの)相互利用を求める声は、実は磁気カードの頃から強くありました。ですから今回、スルッとKANSAIもFeliCa採用をすると決められたことで、是非とも相互利用しようというのは当初のコンセプトからありました」(安村氏)

 しかし、そこで1つの課題があった。JR西日本のICOCAは「プリペイド方式」を前提にしているが、スルッとKANSAIのPiTaPaは「ポストペイ方式」を採用している。この違いを解消するため、PiTaPa側がカード上にプリペイド領域を設けて、ICOCAエリアではプリペイド決済をする仕組みを導入した。

 「スルッとKANSAIさんとは、対等なパートナーという関係ですね。公共交通のネットワークは面で展開していますので、JRから(スルッとKANSAIの)地下鉄への乗り継ぎ、またはその逆という流動はかなりあります。お客様の利便を考えれば、相互利用は重要な部分です」(安村氏)

 鉄道事業者以外との「連携」はどうだろう。例えばJR東日本は日本航空と共同で、Suica電子マネーとマイルの交換プログラムなどを導入している。こういった協業の可能性は、ICOCAにはないのだろうか。

 「飛行機との連携というのは、JRの中に新幹線事業があるという点からも、判断が難しいと考えています」(安村氏)

ICOCAの将来展望

 関西地域で着実に成長するICOCAだが、今後にどのような展望を持つのだろうか。

 「まず大きな目標としては利用率をさらに向上させる事があります。また現在、スルッとKANSAIさんとの間で定期券の相互利用ができてない。(定期券の相互利用は)お客様のニーズが高いものですから、スルッとKANSAIさんと話し合って、なるべく早い段階で相互利用を実現したい」(安村氏)

 電子マネーは利用店舗の拡大が目下の目標だが、他にもCRM機能の強化など発展性に繋がる要素も検討していくという。

 「ICOCAの乗車券利用がメーンであるというスタンスは今後も変わりませんが、例えばユーザーIDを店舗ビジネスで活用する方法であるだとか、CRMでの応用も含めて電子マネーとしての新たな発展性を模索していきたいと考えています」(山道氏)

 一方、おサイフケータイへの対応については「勉強している段階」(山道氏)だという。特にユーザーニーズが携帯電話の方に向くかは、慎重に検討している。

 「(JR東日本と)状況が違う点としては、ICOCAでは残額不足で改札機が通れないといったことがほとんどなく、チャージも専用チャージ機を使って駅のホームでできるという点があります」(安村氏)

 モバイルSuicaのメリットとしては、入場時に初乗り運賃不足にならないための「携帯電話画面による残高確認」や、「券売機に並ばなくてもチャージができる」ことが筆頭になるが、ICOCAの仕組みではこれらのニーズが低い。カード型サービスの完成度が高いのだ。

 モバイルICOCAが実現するには、“おサイフケータイならでは”の便利さを別の部分に見いだす必要がありそうだ。

前のページへ 1|2       

[神尾寿,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.