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» 2006年04月27日 19時10分 公開

au好調に、一抹の不安 神尾寿の時事日想

auの携帯事業は好調で、KDDIの収益の柱となっているが、「携帯の好調で固定を埋める」KDDIの体質には一抹の不安を感じる。MNPを前に感じる、その不安とは……。

[神尾寿,ITmedia]

 4月25日、KDDIが2006年3月期の決算説明会を開催した。連結の売上高は対前年比4.8%増の3兆608億円。営業損益ベースでは同0.1%増となる2966億円の黒字で、3期連続の増収・増益を達成している(4月26日の記事参照)

 この好調を支えているのが、携帯電話事業であるのは言うまでもない。携帯電話事業の売上高は前年比8.6%増の2兆5104億円。KDDI全体の8割を占める状況である。その一方、固定通信機事業の売り上げは前年比3.9%増の6193億円だが、営業損益ベースで613億円の赤字。「固定通信事業を携帯電話事業がカバーする」という図式は、最近の同社の特徴である。

固定通信事業がMNP対策の重荷

 好調auの収益力を背景に、NTTグループに水をあけられている固定通信事業の巻き返しを図る――これがKDDIの戦略だが、肝心の固定通信事業のテコ入れが一筋縄でいかないのは、小野寺正社長の「時間がかかるのはやむを得ない」という発言に如実に表れている。NTTグループにとってFTTH事業は他キャリアに負けることのできない“生命線”であるだけに、総力を挙げて取り組んでいる。携帯電話事業に比べると、エリア拡大や顧客獲得に「時間とコスト」がかかり、一方でARPUの底上げが難しい。携帯電話事業のように素早い巻き返しや成長が難しいのが実情だ。一方で、固定通信事業は携帯電話よりも安定基盤になるというメリットがある。

 事業展開が早い携帯電話分野を先に成功させて、その収益をもって固定通信事業を立て直す。KDDIが取るこの戦略自体は間違っていない。しかし問題なのは、固定通信事業の立て直しに手間取った結果、MNPに向けてそろそろ「消耗戦体制」に入らなければならないauが、利益確保の状態から抜け出せていない点だ。今のauは固定通信事業の重荷を気にするあまり、MNPに向けた“攻めの積極性”を失っているように見える。

「WINでガク割」、今やらずにどうする?

 その端的な例が、今年の春商戦でCDMA 1X WIN向けの「ガク割」が登場しなかったことだ。

 学生の基本料を50%割引にするガク割は、auが躍進するきっかけになったサービスの1つであり、若年層に強く支持されたものだ。しかし現在のガク割はCDMA2000 1xだけしか適用にならず、すでに同社の主力になったCDMA 1X WINは対象外だ。WIN向けのガク割を望む声は少なからず存在する。

 本来ならば、MNP前の最後の春商戦である今期は「WINでガク割」を投入する絶好のタイミングだったはずだ。しかし、KDDIはauの収益性悪化を嫌忌して、ガク割を始めとする割引サービス投入に動かなかった。決算説明会の発言の中にも、収益性悪化を嫌がり、自分からは動かないという態度を表明している。

 総合通信会社であるKDDIにとって、固定通信事業は重要だ。FMCを睨めば、すべて1社で持つ体制は優位性もある。しかし、固定通信事業の立て直しに時間がかかるほど、auは収益性の影を気にしながらMNPに臨まなければならなくなる。それはチャレンジャーの戦い方ではなく、思わぬ形で足下をすくわれる可能性も考えられる。

 好調auに対する、一抹の不安である。

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