2005年10月、ソウル市の中部に位置する龍山区に、国立中央博物館が新しくオープンした。これはもともとソウル市北部の鐘路区から移転したものだ。移転とともに同博物館では、館内を4カ国語で案内する最新のモバイル案内システムを導入。国立中央博物館は一躍「IT博物館」「モバイル博物館」と呼ばれることとなった。
オープンからまだ半年程度しか経っていない国立中央博物館。訪問した日は平日だったが、見学の学生や外国人観光客を中心に多くの人でにぎわっていた。そんな中で多く見受けられるのが、首からPDAをぶら提げイヤフォンを耳にして展示物を見物している訪問者の姿だ。
このPDAは国立中央博物館が貸し出している案内用PDAで、昨年のオープン時に300台が導入された。博物館のオープンとともにメディアが一斉に報道したことや、言語が韓国語のほか中国語、英語、日本語の4カ国に対応していることもあって貸し出しは盛況。またPDAと同様、MP3端末も400台用意されており、こちらも人気を集めている。
「PDAなら説明文を記したパネルより手元で見られるので見やすいですし、別途案内員を配置する必要もありません。また団体で行動すると通路をふさいでしまうといったこともありましたが、個々で利用できるPDA案内機を利用すれば、こうした問題も解消できます」と、文化観光部事業規格チームのシム・オンヒョン氏は、PDA導入の理由について話した。
国立中央博物館には、計43の展示室に約1万1000点の展示物がある。これを1つ1つじっくり見て回ると、距離にして約4キロほどを歩くことになり、時間はおよそ11時間もかかるといわれている。しかし専門家でもない限り、何をどこからどう見るべきか、簡単に分かるものでもない。PDA案内機を持っていれば、あらかじめ選んだコースに従って展示物に近づくだけで自動的にヘッドフォンから説明が流れてくる。PDAが案内員のように説明してくれるので、館内の構造を把握していなくても、自分が興味を持ったものだけ見て回ることができる。
このシステムは、IrDAを用いて実現している。PDAと赤外線通信を行って、送信機のメモリに保存されている、展示物に関する説明データがPDA案内機に送信される仕組みだ。
さらに、この送信機は無線LANでサーバと接続されている。博物館では、通常展示物が傷むのを避けるため、2〜3カ月に1回展示物の入れ替えを行っているが、展示内容に変更があった際にも、送信機内の説明データをそれに合わせて簡単に変更できる。サーバのデータを変更すれば、その後一斉に各送信機内の情報が更新される。
このPDAはもともと、韓Samsungの「NEXiO」という製品がベースになっている。それを博物館で使用するにあたって、IrDAや博物館専用の案内プログラムに対応させたほか、補助バッテリーと独自デザインの外装カバーを装着した。そのためNEXiOよりも一回り大きなサイズとなってしまったが、子どもやお年寄りにも使いやすいインタフェースや、約6時間を誇るバッテリー駆動時間など、博物館鑑賞のために必要な機能はすべて持たせてある。
PDAに搭載されたメモリは1Gバイト。それだけの容量で全展示物のデータが入りきるのか? と疑問に思うが、すべてではなく代表的な展示物1050点のみに対応しているという。「そうしなければメモリ内にすべて収めるのは困難ですし、説明データを作り上げ4カ国語に対応させるという作業自体にも、数カ月ほどかかるからです」(シム・オンヒョン氏)
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