韓国の携帯電話市場において、50%もの占有率を誇り1位の座を守っているSK Telecom。高いブランドイメージとともに、トップの座も揺るぎないものと見えるものの、ここのところ2位のKTFおよび3位のLG Telecomの健闘が目立ってきている(2004年11月18日の記事参照)。追う立場ならではの思い切った斬新な戦略で1位をおびやかすKTFとLG Telecomの、最新の市場展開を追ってみた。
情報通信部が4月下旬に発表した資料によると、今年3月末時点のキャリア3社の占有率は、SK Telecom(以下、SKT)が50.7%、KTFが32.2%、LG Telecom(以下、LGT)が17.1%ととなった。うち加入者の増加率はKTFが0.7%、LGTが0.6%で、0.3%のSKTを上回った。
2005年3月の占有率を、同部発表の資料で見てみると、SKTは51.2%、KTFは32.5%、LGTが16.3%となっている。KTFはわずかに減少しているものの、LGTの健闘により、SKTの占有率は1年で1%近く減少。他2社のがんばりによっては50%を割り込むかどうかのところまで来ている。これを後押しするように4月下旬、KTFの加入者が999万5637人となり、加入者1000万人突破が目前と発表している。加入者1000万人突破はSKTに次ぐ2番目の例だ。
ここのところKTFやLGTの攻撃的な市場展開が目につく。それが顕著に現れているのがインセンティブ(4月25日の記事参照)だが、これ以外でも様々な場面で2社の激しい追い上げ戦略が見られている。
LGTは新たでユニークなサービスをどこよりも先に開始し、市場に変化をもたらしてきた。例えば今ではすっかり基本機能となった携帯電話のMP3再生機能やモバイルバンキングも、同社が最初に提供を開始したものだ。
そんな同社が最近、真っ先に開始したサービスが地上波DMB(モバイル向け地上波デジタル放送)。収入モデルの不透明さからキャリアがサービス開始を躊躇していた地上波DMBを、LGTが最初に実施すると宣言。これに負けじとKTFも直後に地上波DMBの開始を決定した。
収入モデルの問題が解決したわけではないが、ポイントとなるのはSKTがいまだに地上波DMBサービスを行っていないこと。この間にもソウル市近隣にある仁川市の地下鉄内で地上波DMBの受信が可能となるなど着々と機能強化が進んでおり、2社にとって地上波DMBは、SKTと大きく差別化を図れる強力なサービスとなっている。
LGTはまた、4月末にも新たなサービスを発表した。それが「気分ZONE」だ。これは特定エリア内(気分ZONE)において、同サービスに対応した携帯電話を利用した場合、Bluetoothを利用した通話により固定電話と同等もしくはそれより安い料金で利用できるというものだ。
気分ZONEは、Bluetooth搭載の「気分ZONE お知らせ」機器が設置された場所から半径30m以内が対象となる。ここでは固定電話相手の場合、市内・外ともに39ウォン/3分で通話が可能なほか、同時に最大7人で話すこともできる。ちなみにLGTによると通常、固定電話は18ウォン/10秒なので3時間話した場合1万9440ウォンかかるところが、気分ZONEでは2340ウォンで済むという。また気分ZONE内で話している途中、エリア外に出てしまってもハンドオフ機能により携帯電話網を利用して通話状態を維持する。
実はこれと類似したサービスは既にKTから「One Phone」という名称で提供されている。しかしこれは固定電話を携帯電話のように利用するというコンセプトであるため、まずは固定電話に加入しなければならないこと、そして同時に複数での通話は不可能などといった点があり、気分ZONEサービスが優れているとLGTでは主張。携帯電話のみを使い固定電話に加入しない人や通話料が気になる人をターゲットに、固定電話会社ともユーザー獲得競争を行う。
他社と異なり1x EV-DOサービスを行っていないLGTだが、その分他にないサービスをいち早く提供することで加入者を獲得してきた。ただし今後次世代へ向けた技術競争の激化が予想される中、日本のツーカーのようにならないためにもどう生き残っていくかが注目だ。
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