「スーパーでEdy」のその後――アサノに聞く Interview & Report: (1/2 ページ)

» 2006年05月17日 13時53分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 電子マネー「Edy」の利用が盛んな、仙台のスーパー「アサノ」のインタビュー記事を掲載してから約1年(2005年5月30日の記事参照)。あれから電子マネー、そしておサイフケータイを取り巻く環境は、大きく変わり、発展した。

 アサノがEdyを導入したのは2003年4月。導入4年目に入り、Edyはどのように根付き、ユーザーに利用されているのか? 中高年を中心に“日常利用”の分野で高い電子マネー利用率を誇る、アサノの現況を取材した。

利用の中心は「中高年」から、裾野が広がる

 昨年1年間を通じて、電子マネー「Edy」を筆頭とするFeliCa型決済サービスを導入する事業者は急増した。しかし、その中でもアサノが特徴的なのは、ユーザー層の中心が“中高年”であり、しかも利用率がずば抜けて高いという点だ。

 「現在、おさいふカード(編注:アサノが発行しているEdyカード)やおサイフケータイの利用者数が1万6000人ほどいまして、日常的に利用されている方は1万4000人ほどです。利用率の点では、悪くない状況だと考えています」(光本真由美・アサノ常務取締役)

アサノ常務取締役の光本真由美氏

 利用者層はやはり中高年が中心で、アサノのメイン顧客層にしっかりと重なっている。

 「アサノの強みは地域密着で、中高年のお客様もしっかり取り込めているのはうちの特質だと思います。その部分は変わっていない。しかし、最近では若いお客様が、おさいふカードに興味を持って来店されるケースが増えてきました。特に(携帯電話向けの)メール広告の配信では、若い層のお客様の反応がすごくいい」 (光本氏)

 アサノではおサイフケータイの利用促進の狙いもあり、メール広告に力を入れている。メール広告の登録者数は現在2700人で、昨年から800人ほど増えた。

 「メール広告の配信は、基本的に毎日、朝に行っています。内容は店舗別が中心ですが、全店一斉にセールのご案内をすることもあります。メール配信が遅れると『なんで今日は(メール広告がこ来ないの?』とお問い合わせいただくなど、来店率の高いお客様への浸透という点では手応えを感じています」(光本氏)

 昨年のインタビューで、最も印象的だったのが、アサノにおけるEdy利用率の高さだ。当時、多い店舗で平日5割以上、少ない店舗で3割という状況であったが、利用率はこの1年でどう変わったのだろうか。

 「平日5割以上という利用率は定着してきています。もちろん、店舗や地域によって多少の違いはありますけれど。例えば、アサノが地域に根付いている岩沼地区では利用率が断トツに高いです。また、導入が遅かった(南仙台にある)仙台中田店は若いファミリー層を取り込んで、こちらもEdy利用率が高くなっています」(光本氏)

 アサノが電子マネーを導入した目的は、第一に平日リピーター層の囲い込みだった。その点では「来店者数の安定化には大きく貢献しています。今後はさらに利用率を底上げしていきたい」(光本氏)という。

キャリアの姿勢は「すごくもったいない」

 Edyの利用率向上、そして新サービスの普及に当たってアサノが大きく期待しているのが、おサイフケータイの普及と利用促進だ。平日の優良顧客層の囲い込み、メール広告の効果を出すためにも、Edy決済と通信機能がセットになるおサイフケータイの可能性は大きい。

 しかし、光本氏は、おサイフケータイに対する携帯電話キャリアの姿勢に疑問も感じているという。

 「おサイフケータイは使い始めるまでが難しい。そこをドコモショップやauショップで(ユーザーに対して)サポートしていただければ、利用率はもっと高くなると思うのですが、そういう取り組みに力が入っているように見えないんですね。端末を売っているだけに感じます。我々のところに、おサイフケータイの質問がくることがあるくらいです(苦笑)」(光本氏)

 携帯電話キャリアは、ドコモを筆頭におサイフケータイの販売促進には力を入れている。しかし、その一方で、おサイフケータイの利用促進やサポートに、せっかくの対面窓口であるキャリアショップが生かしきれていない。これは先日のマツモトキヨシのインタビュー(5月12日の記事参照)でも指摘されたポイントだ。

 「携帯電話キャリアはおサイフケータイを売ることには熱心ですけど、せっかくの(おサイフケータイ)機能を使ってもらう点で、もっとショップでできる事があるのではないでしょうか。例えば、我々は地域のキャリアショップともっと(利用促進で)連携したい。でも、そういう取り組みがないんです。これは本当にもったいないと思います」(光本氏)

 おサイフケータイは、ドコモが掲げる「リアル連携」の言葉が表すように生活圏のサービスだ。利用促進やサポート体制も、リアルな対面窓口であるキャリアショップを重視し、地域密着でやるべきだろう。マツモトキヨシ、そしてアサノが指摘するように、キャリアショップが地域のおサイフケータイサービスの利用促進に連携・協力してもいいのではないだろうか。

 おサイフケータイを売るだけで利用促進をしないのは、光本氏の言うとおり“もったいない”ことだと筆者も思う。

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