2011年に、移動通信・放送業界を横断した大規模な「周波数再編」が行われる。これを見据えて、各事業者が総務省へのアピールを始めている。
既に知られている通り、2011年から2012年にかけてアナログ地上波放送が停波する。これにより、VHF/UHF帯で「90M〜108MHz」「170M〜222MHz」「710M〜770MHz」という3カ所に空きが生まれる。この“跡地”に何らかの通信システムが“入居する”と見られるが(2004年11月15日の記事参照)、現状では詳細が固まっていない。6月6日に総務省が明かしたところでは、同省の意見募集に対して実に100者から、149件の提案があったという。
具体的に、どのような提案がなされているのか。各社の提案書類を見ていくと、事業者ごとにどのような通信サービスを考えているのか方向性が見えてきて、面白い。いくつか紹介しよう。
まず目に付くのは、携帯キャリアの提言だ。例えばNTTドコモは、「2012年以降を目処にVHF/UHF 帯のうち700MHz帯を使用するシステムとして……(中略)第3世代移動通信システムおよび高度化システムが適当と考える」とコメントしている。710〜770MHz帯のうち、60MHz幅を使いたいという。KDDIも同様の考え、710〜770MHz帯のうち35MHz以上が3Gに割り当てられれば、目指すシステムを実現できると提案している。
ソフトバンクBBとBBモバイルも連名で、710〜770MHz帯を3Gに割り当てるべきとしている。ちなみにFDD方式の3Gを採用している事業者は、FDDという通信方式が上り/下りの2つの帯域が必要になるため(2004年2月10日の記事参照)「800MHz帯再編により捻出される905〜958MHzのペアバンドとして、710〜770MHzを3Gシステム(および高度化システム)に使う」という提案をしているようだ。
ソフトバンクBBはほかの帯域でも、「『時』非依存型映像多重送信システム」や「MediaFLO」の提案をしており注目される。ソフトバンクはMediaFLOのサービスに参入意向を持っていると伝えられていたが(2月1日の記事参照)、総務省への提案によりこれが裏付けられた格好だ。ちなみに周波数帯としては「90〜108MHz、170〜222MHz帯のいずれか」のうち、6MHz幅を使用すべきだという。
MediaFLOをめぐっては、伊藤忠テクノサイエンスや京セラ、クアルコムジャパン、三洋電機、シャープなども周波数帯の活用法として推している。注意すべきなのは、MediaFLOの旗振り役であるクアルコムジャパンが求めているのは「710MHz帯」であること。これは米Qualcommが700MHz帯でサービスを開始予定であることから、帯域を揃えたいのだろう。ちなみにQualcommは第2世代のMediaFLOチップセットを発表しているが(5月26日の記事参照)、このチップが対応するバンドは470〜862MHz帯となっている。
興味深いのは、Pantech&Curitel CommunicationもMediaFLOを提案していること。同社の提案書を読むと、「(Pantechは)MediaFLO向けの端末機開発を完了させており、今後も積極的に対応予定」との文言がある。日本でPantech&Curitel製のMediaFLO端末が登場する日が、くるかもしれない。
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