番号ポータビリティでシェア30%を獲る──KDDIの挑戦Interview(2/2 ページ)

» 2006年06月30日 23時04分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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音楽を軸に端末ラインアップも充実させる

 着うたの登場以降、auは音楽分野で先進的なサービスを常に投入し続け、「音楽のau」というブランドイメージを手に入れた。しかし、ドコモやボーダフォンも音楽分野に力を入れており、急速に追い上げている。音楽をセールスポイントにしてきたauに、状況の変化は見られるのだろうか。

 「今年の春には『LISMO』を投入しましたし、auは音楽の分野で他社の数歩先を進んでいます。この先進性の部分は揺らいでいない。また、お客様から見ても、“au=音楽”というのは圧倒的に差をつけた分野だと考えています」(福崎氏)

 またauでは、携帯電話で音楽を聴くというスタイルが今後さらに広まると考えている。アンケートなどの結果を見ると、例えば40代のユーザーの4割近くが携帯電話で音楽を聴きたいと答えているのだ。福崎氏は「携帯電話で音楽という使い方は、なにも10代や20代向けのものだけとは限りません。ですから、音楽のauというのは、幅広い訴求力になっていると考えています」と自信を見せた。

 MNPを迎えるにあたっては、端末ラインアップもサービスと並び重要だ。今年に入り、auのライバルであるドコモは、質量ともに充実した製品群を市場に送り込み(5月11日の記事参照)、店頭での競争力を高めている。auはドコモの端末ラインアップに対して、どのような姿勢で挑戦するのだろうか。

 「我々も今年に入り、これまでにない数の新製品を投入してきています(5月22日の記事参照)。しかし一方で、ラインアップの規模の面では、ドコモに対して戦いにくいと感じる部分はあります。特に量販店や併売店では、(販売スペースである)棚の取り合いがあります。我々は昨年冬にラインアップを絞って春商戦向けに割り当てる戦略をとったのですが、この時に棚の確保で苦労しました。MNPを考えると、一定量以上のラインアップ数は必要ですね」(福崎氏)

MNPに向けてauショップを強化

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 サービスと端末は、auの好調が始まった2004年以降、着実に力が付いてきた分野だ。ここは積み重ねの部分でもあるので、これまでの延長で競争力強化が続く。一方で、auがMNPで勝つために「ものすごく重要」と福崎氏が強調するのが、auショップをはじめとする販売インフラである。

 「MNPに向けてチェックしなければならない項目は多々あるのですが、今の段階で力を入れているのは『販売インフラの強化』です。理由は、お客様が購入決定に至る時間が、最近になってかなり延びてきているから。端末やサービス、料金を比較して、しっかりと選ぶようになってきているのですね。これはMNPになると、さらに顕著になると考えています。(サービスや料金などへの)お客様の問い合わせも増えていますから、販売現場にはしっかりとした知識とスキルがある店員がいなければならない」(福崎氏)

 すでに始まっている取り組みとしては、auショップにおける資格制度の導入や、販売店サポート体制の強化が挙げられる。店舗の見直しも順次進めており、「MNPに向けて、auショップのクオリティアップを行っている」という。

 また、MNPでは業務量が相当増えることも予測される。当然ショップへの来客も増える。そこで福崎氏は「MNPを見計らって(auショップへの)人員の支援をしなければなりません」と話す。「店舗を広げる、フロアマネージャーのような制度を導入するなど、快適にお待ちいただける環境作りも秋に向けてやっていかなければならないと考えています」。

 さらに、auショップのてこ入れを行いながら、都市部の販売で重要になる量販店や併売店の販売力強化にも乗り出す。

 「量販店では大規模店舗を中心に、auショップと同等の機能を持つauスクエアを広げていきます。併売店はこれまで一次や二次の代理店を通してのお付き合いだったのですが、こちらも経営者層と店舗オーナー様の両方と関係を深めて、グリップを強化していきます」(福崎氏)

 ドコモに比べて弱いとされている法人市場向けの販売力も、夏から秋にかけて全国規模の新たな法人営業施策を立ち上げ、強化を行う模様だ。今後、MNPに向けて販売力は重要になるだけに、これらの取り組みは注目だろう。

地道な顧客満足度向上でシェア30%を目指す

 KDDIは今回のMNPにおいて、auでシェア30%の獲得を大きな目標にしている。それに向けて着々と準備を進めているわけだが、最後に勝敗の鍵になるのは顧客満足度につきるという。

 「MNPは一過性ではなく、継続するものです。個別にはさまざまな取り組みをやらなければならないのですが、MNP後にもauを使い続けてもらうことが大切になります。ここでのキーワードは、“地道にお客様満足度を上げる”ことでしょう」(福崎氏)

 一方で、ユーザー側の素朴な期待は料金の値下げや、MNP利用時の経年割引率の引き継ぎなどだ。この点について福崎氏は、「その時になってみないとわからない」と苦笑する。「特に経年割引率の引き継ぎについては、ユーザーのニーズが高いのは承知しています。しかし、(実現は)難しいですね。ADSLでは価格キャンペーン合戦になりましたが、中長期的な視点でそれが本当のユーザーメリットにつながるのか。そのあたりのバランス感は大切だと思います」

 CDMA 1X WINの開始以降、auは単純な価格競争力だけでドコモに挑むことをやめている。安売りを武器にするのではなく、総合的なブランド力や顧客満足度を重視する姿勢をとっているのだ。MNPにおいてもこの姿勢は基本的に変わらないという。

 「難しい舵取りですが、品質と料金のバランスを重視していきたい。そのための準備は進んでいます。その結果として、auはシェア30%を獲得します」(福崎氏)

 2001年のCDMA2000 1x開始以降、auは着実に「ドコモに挑戦する力」を身につけてきた。エリア構築、サービス展開、ブランド、そして販売インフラの強化など、地道な準備も進めてきた。MNPという本番は、間近に迫っている。

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