JR東日本、NTTドコモ、ジェーシービー、ビットワレットの4社は、JR東日本とドコモが開発を進める「おサイフケータイ」と「Suica電子マネー」の共通インフラ(2005年7月の記事参照)をジェーシービーとビットワレットが利用することで合意した。
2007年1月にも運用を開始する予定の「Suica」と「iD」の共通インフラに「QUICPay」「Edy」が順次加わることになり、JR東日本とNTTドコモが開発中の共用のリーダー/ライターも4サービス対応になる。決済サービスを導入する企業(加盟店)はそれぞれのリーダー/ライターを個別に導入する必要がなくなる。
従来は1つのサービスに1つのリーダー/ライターが必要だったため、SuicaとiD、QUICPay、Edyの4つをサポートするには、端末を4つ設置する必要があった。しかし、これではあまりに非効率で、コストだけでなく設置スペースの点でも加盟店の負担が大きい。さらに、追加でリーダー/ライターを設置する資金あるいは場所に余裕がない店舗では、ほかの決済サービスの導入が難しく、ユーザーが利用できる店舗がなかなか増えないという問題も生じていた。各決済サービス間でリーダー/ライターを共通化すれば、導入コストは格段に安くなる。
JR東日本常務取締役IT事業本部長の小縣方樹氏は「共通リーダー/ライターの価格は10万円を切るくらいを目指す」と話す。開発はJR東日本のグループ会社JR東日本メカトロニクスが担当しているという。これはNECが発表した汎用リーダー/ライター(9月27日の記事参照)とは異なるものだ。
「共通端末の登場は、電子決済分野におけるエポックメイキングな出来事だ。今後決済サービスは大きく広がり、日常シーンのあらゆるところで利用できるものになっていく。我々は世界をリードする電子決済国家を目指す」(小縣氏)
ちなみにジェーシービーとビットワレットは、「共通インフラ」(=共用のリーダー/ライターと共通利用センター)の利用者として参加している。共通インフラの管理・運営はJR東日本とドコモが2億円ずつ出資して10月に設立する共通インフラ運営LLP(有限責任事業組合)が行い、ジェーシービーとビットワレットはLLPには出資しない。
なお、今回発表された提携では、SmartplusやVisa Touchといった方式がサポートされていないが、これらの決済事業者とも「現在提携へ向けて話し合いを進めている」と小縣氏は話し、今後対応する方式が増える可能性も示唆した。加盟店などから、早急にリーダー/ライターを共通化してほしいという強い要望があったため、先に合意に達した4社で共通リーダー/ライターを推進することにしたという。
小縣氏が「決済事業者としてはお互い切磋琢磨し合う間柄ではあるが、協業を通して成長していく」と話すように、電子決済におけるリーダー/ライターの共通化という“協業”は、加盟店や利用者の利便性を考慮すると不可欠な要素だ。発表会に出席したビットワレット取締役執行役員専務マーケティング本部長の奥出勉氏、ジェーシービー取締役執行役員市場開発本部長の権藤淳氏も認識は同じようで、「お互いが競争相手ではあるが、共にこれまで誰も成功したことのない電子マネー事業をなんとか成功させたい」(奥出氏)、「3社との連携を中心に、非接触IC決済サービスの普及発展に努める」(権藤氏)と、加盟店開拓ではライバルとして戦いながらも、必要な部分では協力していく方針を示した。
今回発表された共通リーダー/ライターは、4つの決済サービスすべてが利用できるが、どのサービスに対応するかは加盟店が判断することになる。共通リーダー/ライターを導入したからといって、4つのサービスをすべて導入する必要はなく、SuicaとQUICPay、EdyとiDとSuicaなど、利用状況や目的に合わせて自由に組み合わせられる。
携帯電話のように、複数のアプリをインストールできるような機器で決済する場合は、ユーザーがどの方式で決済するかを口頭で伝え、レジ側で決済サービスを選んでリーダー/ライターにカードや端末をかざす方式になるようだ。
NTTドコモ取締役常務執行役員プロダクト&サービス本部長の辻村清行氏は、プリペイド/ポストペイを問わず、携帯電話には複数のアプリがインストールされる可能性が高いため、「まったく混乱がないとは思わないが、混乱をできるだけ少なくするため、できる限りのサポートを行う。機械的にも間違いが起こらないようにしていく」と話した。また現在は各社のサービスによって上限金額や支払い方法などが異なるため「運用方法をどう統一していくか、といった点も今後の検討課題」とした。
また同氏は、ドコモの携帯電話にプリインストールする決済用アプリについても触れ、「おサイフケータイのFeliCaチップに入れられる容量には上限があるので、すべてのアプリをプリインストールするわけにはいかない。限られた容量の中で、どのアプリをプリインストールするかは市場の動向を見て判断していく。基本的には優先順位を付けて、必要なものを容量の許す限り入れていきたい」と話した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング