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韓国携帯事情:

進む「網開放」と来たる「フルブラウジング」。そして進まない技術統一

端末から自由にネット接続する「網開放」が、実現に向けて動き出した。また、PC向けWebサイトを携帯端末で利用するフルブラウザの登場も間近だ。一方で、技術の標準化が進まないという現実がある。
2006年12月12日 19時00分 更新

 キャリアを問わずインターネットに自由に接続できるようにする「網開放」は、少しずつしかし確実に実現の方向で動いている。またこれと同時に韓国でもフルブラウジングという言葉をよく耳にするようになり、閉鎖的だったモバイルインターネットが大きく変わろうとしている。“開放”へ向かう韓国のモバイルインターネットだが、技術的な問題も浮上している。

網開放、フルブラウジングの時代へ

photo NATEボタンを押すと現れる初期画面(端末により若干異なる)。NATEもしくはダウンロードしたコンテンツの一覧を表示する「Playon」、VODサービスの「NATE Air」など、NATE関連のメニューしか選択の余地がなかった

 網開放はキャリアにのみ有利なモバイルインターネット接続メニューを、より公正に改正するための措置で、情報通信部が主体となって推進しているものだ(8月7日の記事参照)

 韓国の携帯電話でインターネット接続ボタンを押すと、韓SK Telecom(以下、SKT)では「NATE」、韓KTFでは「magic n」など、キャリアの公式メニューが表示される。それ以外のサイトを表示するには、あらかじめサイトに割り振られた数字を押してからインターネットキーを押して表示する「WINC(Wireless Internet Number for Contents)」を利用するしかない状況だった。

 これに対して11月末、SKTとKTFは、モバイルインターネット接続の初期メニューを改善した端末を販売すると発表した。

 記念すべき最初の網開放端末は、SKTの韓Pantech & Curitel製「PT-S280」と、KTFの韓Samsung Electronics製「SPH-V9500」だ。これらを利用すればNATEやmagic nなど、キャリアの初期メニュー以外の他社サイトにも簡単に接続できるようになり、Webサイトの選択肢が広がる。


photo Pantech & Curitelの「PT-S280」。厚さ14.9ミリという薄さと、タッチキーの採用で凹凸をなくしたシンプルなデザインが特徴だ

 これまでの端末でモバイルインターネットに接続すると、NATEであればNATE関連のメニューしか表示されなかった。しかし今後はNATEやmagic nへの接続アイコンや、「Naver」「Daum」といったポータルサイトの接続アイコンも表示できる。そして、アイコンのリンク先はユーザーが任意に設定可能だ。

 これ以前に販売されていたSKTの韓SKY製端末「IM-U130」では、ソフトウェアアップデートにより、同様の網開放メニューが利用できた。しかしアップデートではなく、最初からこうした網開放が可能な端末の登場は、市場に大きなインパクトを与えた。SKT、KTF両社とも今後は全端末を対応させる意向で、今後網開放は大きく前進すると期待される。

 網解放の普及とともに、韓国でも最近「フルブラウジング」という言葉をよく耳にするようになってきた。SKTとKTFは2007年にもフルブラウザを発表するとコメントしている。来年からは網開放と相まってモバイルインターネットの環境が大きく変わると予想される。

 さらに、ポータル側とキャリア側の競争がこれまで以上に激しくなることは確実だ。優れたブラウザの開発と自社サービスの発展に熱心なキャリアと、モバイルに合わせたサービスの開発に熱心なポータルサイトとの競争はすでに始まっている。

photophoto Samsung Electronics製の「SPH-V9500」。厚さ11.9ミリとSamsungが得意とする薄型端末。しかし、Bluetoothや地下鉄路線検索、K-Ways(KTFのGPSナビゲーションサービス)などさまざまな機能に対応する

技術の標準化を置いてサービスが1人歩き

 こうしたインターネット環境の整備が行われている中、技術的な問題もいくつかある。網開放・フルブラウジング時代の到来が予想されるが、標準となる技術が定まっていないのだ。

 例えば、携帯アプリのプラットフォーム「WIPI」がそれだ。WIPIは韓国の標準規格として搭載が義務付けられているものの、機能的な制限があることから独自にWIPIを拡張しているケースが見受けられる。こういした実情に情報通信部が調査に乗り出すほどで、携帯端末のプラットフォーム統一はなかなか進んでいない。

 とくに韓国では、PC用のWebサイトにActive XやFlashなど多くのリッチメディア技術を使う傾向があり、携帯電話からこれらのサイトを利用するには、搭載するブラウザの対応が必須となる。しかし実際には、これらに対応できずにいるのが現状だ。

 あらゆるサービスの土台となる技術の標準化問題。せっかく具体化してきている網開放やフルブラウジングなどの便利なサービスを1人歩きさせないためにも、キャリアやメーカー、コンテンツプロバイダ間による話し合いと改善が急がれる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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