韓国標準アプリプラットフォーム「WIPI」を紐解く──歴史編韓国携帯事情

» 2005年02月23日 00時21分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 日本の携帯アプリのプラットフォームはバラバラだ。NTTドコモとボーダフォンは同じJavaベースでも互換性がなく、KDDIはJavaからBREWへ移行するなどキャリアによって仕様が全く異なっている。携帯コンテンツの競争が激しい韓国でも状況は同じで、現在は数種類のプラットフォームが乱立している状態だ。

 しかし韓国では2001年前半に、混在するプラットフォームを統一・標準化しようという動きが起こり、標準化のための組織も結成されている。そこから産み出された、韓国標準のアプリケーション・プラットフォームが、「WIPI」(ウィーピー:Wireless Internet Platform for Interoperability)だ。

プラットフォーム一本化の動き

 韓国の携帯アプリケーションのプラットフォームは、2000〜2001年という短期間の間にめまぐるしい変化を遂げてきた。

 2000年9月、LG Telecom(以下、LGT)がJava(MIDP)の携帯アプリサービス「ez-java」を開始したのを皮切りに、SK Telecom(以下、SKT)がMini-Cを利用した独自のプラットフォーム「GVM」、KTFも独自のMAPを採用した携帯アプリサービスを開始した。しかしその後、SKTはGVMに加えJavaベースの「SK-VM」も併用し、KTFはBREWに完全移行してきた。

 こうしたプラットフォームのばらつきは、ユーザーとコンテンツプロバイダ(以下、CP)に直接影響を与える。SKTのユーザーが、KTFのコンテンツを使ってみたいと思っても利用できず、CPがそれぞれのプラットフォームに合わせたコンテンツを用意しなければならないという手間も生じる。

 そうした不便を解消するため、3キャリアは無線インターネットの標準化を提案した。しかし「3キャリアはあくまで競合関係にある企業同士なので、私たちETRIも一緒に開発を行うこととなりました」と話すのは、WIPIの開発に携わり「KWISF(Korea Wireless Internet Standardization Forum:韓国無線インターネット標準化フォーラム)」の委員長であもるETRIのキム・フンナム電子学博士だ。

ETRIのキム・フンナム博士。今後、WIPIのコンテンツを作るCPは多くなり、いずれはすべての企業で作るようになり、WIPIは広く普及するでしょう

 ETRI(Electronics and Telecommunications Research Institute、韓国電子通信研究院)は、情報通信関連の技術開発のために作られた国立の研究機関。このETRIと3キャリアのほか、国内関係業界、MotorolaやIBMといった海外企業なども参加して、2001年5月24日KWISFを創立。WIPI標準化に向けた具体的な開発が開始された。

 以来、継続的な研究が続けられ、2002年5月にはVer.1.0が誕生している。2004年6月にはVer.2.0、同年12月には、現在のところの最新バージョンであるVer.2.01がリリースされた。今後も研究は続けられ、随時バージョンアップしていく予定だ。

Qualcommとの葛藤の末登場した「WIPI on BREW」

 WIPIの誕生は、ユーザーやCPの不便を解消する可能性を作った一方で難題も残した。それはQualcommとの葛藤である。

 韓国では当初、WIPIを国内の標準プラットフォームとして全面普及させることを目的に掲げた。しかしそれでは今後韓国の端末にBREWを搭載する際、WIPIと共存できる修正版BREWが必要となるほか、BREWが韓国市場から消えるのではないかという危機感もあったため、Qualcommが強く反対したのだ。

 さらに「(WIPIの全面普及策は)韓国が外国技術を市場競争から排除していることになる」と米政府まで介入した。

 しかしあくまでもWIPIを標準化したい意向の韓国との間で、韓米通商会議においてWIPI-BREW問題に関する論争が繰り広げられた。結局この論争が妥結したのは昨年の6月。

 韓国政府がモバイルプラットフォームとしてWIPIとBREWで互換性を持たせた「WIPI on BREW」を採択するという妥協案を飲むことで一段落ついた形だ。以降、WIPIの搭載は必須とし、それ以外のプラットフォームは追加という形で一緒に搭載されている。BREWのライセンス料は、(BREWを)使う部分だけ支払うことになる。

 「今後韓国で発売されるほぼすべての端末に、WIPIが搭載されることとなるでしょう。SKTが米国のearthlinkと手を組んで米国市場へのサービスインを進めているように、キャリアの海外進出に伴って、WIPIも海外市場へ出ていく可能性もあります」と、キム・フンナム博士は語る。

 現在、WIPIコンテンツを開発しているCPの数は、計約3000社中約300社。WIPI端末は31種(SKT:20種、KTF:10種、LGT:1種)約100万台が出荷されている状況だ。現状ではプラットフォームが4つに増えてしまっている状況だが、今後リリースされる端末の大半がWIPI搭載ということになれば、今現在並存しているプラットフォームがある程度絞り込まれることが予想される。ユーザーの便宜を考えれば、そうなることがあるべき姿だといえるだろう。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。

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