韓国標準アプリプラットフォーム「WIPI」を紐解く──技術編韓国携帯事情(1/2 ページ)

» 2005年03月03日 13時42分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国の国内標準アプリプラットフォームとして、3キャリアが提案し2002年に初登場した「WIPI」。前回はその誕生から、BREWを推し進めたいQualcommとの顛末、「WIPI on BREW」という妥協案の考案、そして現在に至るまでの過程をリポートした(2月23日の記事参照)。今回はWIPIがどのような技術で成り立っているのか、詳細を見ていきたい。

WIPIの仕組みは?

 WIPIは、ハードウェアやOSの上にHAL(Handset Adaptation Layer)が載り、その上にランタイムエンジンやAPIが実装されている。HALがアプリケーションからの命令をそれぞれのハードウェアやOS向けに解釈し、その差異を吸収することで、「1つのアプリケーションをあらゆるハードウェア上でも動かすことができる」というWIPI最大の特徴を実現している。

 また携帯アプリのプラットフォームとしては珍しく、CとJavaの2通りの言語で開発が可能で、アプリの内容によって、生産性の高いJavaと高速性を活かしたCの使い分けができるようになっている。主にCを使ったアプリは端末内蔵のものが、Javaはゲームなどのダウンロードコンテンツ向けに使われることが多いようだ。

 WIPIに実装されている基本的なAPIは高機能だ。「BREWでできることはほぼ全て実現しており、それを上回る」(ETRI(Electronics and Telecommunications Research Institute、韓国電子通信研究院)WIPI技術担当キム・ソンジャ氏)。HTTPに限らずTCP/IPの広いプロトコルが使用できるほか、アドレス帳など端末情報へのアクセスも可能など、自由度が高いものとなっている。

 そのためウィルスや悪意あるアプリが作られてしまう危険性も考えられる。しかしWIPIのアプリケーションはBREWなどと同様、キャリアのサーバからしかダウンロードできないなど、自由にアプリを配信できない仕組みを設けることで回避している。

コンテンツプロバイダから見たWIPIのメリット

 ではこうした特徴をもつWIPIを、実際の現場ではどう見ているのだろうか。韓国国内ではオンラインゲームから携帯アプリまで幅広く手がけ、現在はヨーロッパ、東南アジア、米国など海外進出も果たしている、コンテンツプロバイダ(以下CP)大手のGamevil社を訪ねた。

Gamevil社のジョン・ヨンヒ課長代理。同社は現在、米国市場に注力しているが、日本への進出も計画しており、「水辺の水切り」「ノム」を投入予定だ

 「これまでゲームを作る際には、スピード重視だとGVM、イメージ重視だとSK-VM……といったように、ゲームの性格によってプラットフォームを決定していました。また同じゲームでも、他のキャリアで使えるよう移植作業を行わなければならないという手間がありました。そうした手間を省く意味では、プラットフォームが統一されるというのは、私たちCPにとっては大きなメリットです」

 そう話すのはGamevil社ジョン・ヨンヒ課長代理だ。同社では現在、携帯アプリ10タイトルを3キャリアへ提供しているが、それらすべてがWIPI対応になっている。

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