携帯+テレビは離陸するか──欧州の現状とビジネスモデル欧州モバイルテレビ事情(1)(2/2 ページ)

» 2007年02月05日 16時28分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
前のページへ 1|2       

有料にするか、無料にするか

 まずは、ビジネスモデルから見てみよう。

 最初に問うべきは、モバイルテレビを有料にするか、無料にするかだ。当初はサイマルで地上波と同じ番組を流すなど、現状では公共サービスのような側面を持つ日本とは異なり、通信オペレーターが独自に実装・提供する場合はここが出発点となる。

 有料の場合は、月額料金を徴収するサブスクリプション型、従量課金型の大きく2つに分けられる。このうち、多くのトライアルでオペレーターが採用したのが、サブスクリプション型だ。2005年から数地区、数フェーズに分けてトライアルを行ってきたスウェーデン/フィンランドのオペレーターTeliaSoneraの製品サービス担当マーケティングディレクター、ユッカ・ヘリン氏も、トライアル中のユーザーのフィードバックとして「月額5〜13ユーロなら払ってもよい」という意見が多く寄せられたことを引用し、サブスクリプションを想定して商用サービスの準備を進めていることを匂わせた。すでに商用サービスを提供中の3 Italyは、音声、データ、テレビの3つをバンドルした「モバイル・トリプルプレイ」を提供している。ゾラー氏は、同じサブスクリプションでも、モバイルテレビだけに料金を課すのではなく、このようなバンドル型を検討すべきだとアドバイスした。

 一方で、サブスクリプション型には批判的な声も挙がっている。「携帯電話の小さな画面でテレビを見るのは、サッカーの試合や大きなニュースなど本当に必要なときだけ。それでも、ユーザーは毎月固定料金を支払う気になるだろうか?」と同イベントの参加者で、ドイツの大学で通信を研究している研究者は疑問を投げかける。ほかにも会場からは、「従量課金の方が心理的障壁が低い」という声が聞かれた。

 無料の場合、広告モデルを採用することになる。米国の通信オペレーターはこのモデルに積極的というが、欧州のオペレーターは用心深い。広告主にとっては、これまでのように漠然とCMを配信するのと違って、受け手の動向が観測でき、よりターゲットを絞り込める。また、インタラクティブな要素を取り入れれば、収益増も期待できるなど、可能性を探る余地はありそうだ。

 例えば複数の商用モバイルテレビサービスがはじまっている携帯先進国の韓国では、無料・広告モデルをとったT-DMBサービスと有料サブスクリプションモデルをとったS-DMBベースのサービスがあるが、前者の方が開始が遅く、チャンネル数やカバレッジの面で劣るにもかかわらず、ユーザー数は後者を上回っているという。

 また、携帯端末からネット経由でテレビコンテンツにアクセスできるようにするSlingMedia、Orb、ソニーの「ロケーションフリー」(記事1記事2参照)などの代替ソリューションも出てきている。これらのソリューションがモバイルテレビやオペレーターにとっての脅威となるかどうかは、今後様子見となりそうだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.