「2.5GHz帯を全力で取りに行く」──ソフトバンクモバイル松本副社長ソフトバンクモバイルの2007年(1/2 ページ)

» 2007年01月01日 09時00分 公開
[石川温,ITmedia]

 2007年の携帯業界で注目を浴びそうなトピックの1つが、周波数再編によって割り当てられる2.5GHz帯と700MHz帯の周波数の行方だ。通信事業者が将来モバイルブロードバンドサービスを実現して行くには、2.5GHz帯は絶対に必要な周波数だ。KDDIやNTTグループがモバイルWiMAXを使っての事業に手を挙げるなか、これまでソフトバンクモバイルだけが、明確な意志表示をしていなかった。

 そこで、ソフトバンクモバイルの執行役副社長 技術統轄兼CSO(最高戦略責任者)、松本徹三氏に、2.5GHz帯に対するビジョンを聞いた。

ドコモ、KDDIと戦っていくには2.5GHz帯が絶対に必要

Photo ソフトバンクモバイル執行役副社長 技術統轄兼CSO(最高戦略責任者)の松本徹三氏

 松本氏は開口一番「ソフトバンクモバイルにとって、2.5GHz帯は是が非でも獲得したい周波数帯だ」と話した。理由は、携帯事業者3社のうち、ソフトバンクモバイルはサービスを行う上で有利とされる800MHz帯を持っておらず、上位2社に対して圧倒的に不利な立場にいるからだ。

 NTTドコモの場合、ムーバで使っていた800MHz帯(現在はFOMAプラスエリアとしても活用)、1.5GHz帯(シティフォンなどで利用)、1.7GHz帯(FOMA用として東名阪で利用)、そしてFOMAで利用している2GHzという周波数帯を持っている。KDDIも、auでは800MHz帯を中心に1.5GHz帯、2GHz帯を利用している。

 さらに2010年前後には、各社とも新たなネットワーク戦略を掲げている。NTTドコモは「スーパー3G」を推進する考えであり、KDDIも次世代のCDMA2000を導入する計画だ(2005年6月の記事参照)。KDDIは具体的にどの方式を導入するかは明言していないが、米QUALCOMMがCDMA2000 1x EV-DO Rev.Cを2008年頃までに実用化することを目指しているので、これが採用される可能性が高い。

 800MHz帯は、周波数の再編があるために2011年までに整理されるものの(2004年11月の記事参照)、次世代ネットワークサービスを行う上でも俄然有利とされている。1.7GHz帯や2GHz帯と比べると、電波の直進性が低く、建物の陰などにも回り込みやすいという特性があり、少ない基地局でエリアが構築できるからだ。コスト的にも圧倒的に魅力的となる。

 しかし、ソフトバンクモバイルはPDCで利用している1.5GHz帯と3G用の2GHz帯しか所有していない。2007年春にはHSUPAを導入する計画だが、「その先のネットワーク戦略を立てようにも、土台となる周波数がなければ話にならない」(松本氏)。そのため、ソフトバンクとしては2.5GHz帯がなんとしても必要なのだ。

 2.5GHz帯の使い道について、KDDIやNTTグループ、他の通信事業者のほとんどは「モバイルWiMAX」を念頭に置いている。ソフトバンクグループも、以前ははモバイルWiMAXを計画しているように伝えられていた(2006年1月の記事参照)。しかし、モバイルWiMAXとはライバル関係にある「IEEE802.20 MBTDD-Wideband」(以下802.20)を推奨する米QUALCOMMの上級副社長だった松本徹三氏がソフトバンクモバイルの技術統括兼CSO(最高戦略責任者)に就任(2006年8月の記事参照)。そのため、同社としてどちらを選択するのかがが注目されていた。

第1候補はモバイルWiMAX、第2候補はIEEE802.20──確率は5分5分

 松本副社長は、2.5GHz帯についての考え方を次のように述べた。

 「ソフトバンクモバイルでは、技術システムとしてはWiMAXが第1候補。第2候補に802.20を検討している。これからじっくり実証実験を行い、両社を徹底的に検証してからどちらを選ぶか決めたい」(松本氏)

 ソフトバンクモバイルは、2.5GHz帯の技術検討を行うチームを組織し、今後4〜5カ月間をかけて、検証作業を行っていくという。すでに実証実験を開始しているモバイルWiMAX(2006年12月の記事参照)だけでなく、米QUALCOMMが2007年3月頃からフィールド実験に着手するといわれている802.20も、その結果を参考にするほか、可能な限り自前でも検証していく。

 「ほかの通信事業者は、今の時点で(2.5GHz帯で利用する技術を)モバイルWiMAXに決めてしまっているようだが、技術検証もしないうちに(方式を)決定してしまうとは理解に苦しむ。ネットワークシステムの選択というのは通信事業者の命運を決める重要なこと。将来的にユーザーにどんなサービスを提供できるかが決まってしまう。それだけに、通信事業者は技術をきっちりと見極める必要がある。自ら技術検証もせず、シミュレーションの数値も見ずに、すでにWiMAXに決めてしまった事業者、一人一人に面接して、それでいいのか、無責任ではないのか、と問いただしたいくらいだ」(松本氏)

 かつてKDDIは、3Gの方式を決める際に、W-CDMAとCDMA2000 1xとの選択に迷い、電波利用効率の高い後者を選んだ。その結果、CDMA2000 1x EV-DO(CDMA 1X WIN)導入と同時に、パケット定額制をいち早くスタートすることができ(2003年10月の記事参照)、NTTドコモとの差別化に成功。以後、着うたや着うたフル、動画といったリッチコンテンツの配信を他社に先駆けて展開できた。通信事業者にとって、通信システムを選ぶことは、まさに将来のサービスを決めることと同義だ。一度通信システムを決めたら、10年近くそれを使い続けなくてはならない。そういった経緯をふまえ、松本氏は2.5GHz帯に対しても慎重になるべきだと唱える。

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