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ケータイ用燃料電池の商用化、1〜2年以内めどに──ドコモの歌野氏:FC EXPO 2007(2/2 ページ)
数年前から試作化・業務向けなどに製品化されてはいた燃料電池。一般ユーザーにはまだなじみが薄いが、携帯用として1〜2年以内をめどに商用化される見込みが高い。NTTドコモ 取締役常務執行役員の歌野氏は「電池は携帯の“最重要戦略部品”」と位置付け、携帯用燃料電池への期待を述べた。
これに対しドコモは、第二世代のリチウムイオン電池を積極的に適用する“緊急的”の対応に加え、マイクロ燃料電池の適用を“長期的”の対応として取り組む考えを示す。携帯用に採用する燃料電池として、水素を燃料に用いる固体高分子形(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)とメタノール水溶液を用いるダイレクトメタノール方式(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)を主に検討し、メーカーと共同で開発を行っている(2006年7月の記事参照)。
主な燃料電池の種類 | リン酸形(PAFC) | 溶解炭酸塩形(MCFC) | 固体電解質形(SOFC) | 固体高分子形(PEFC) | ダイレクトメタノール方式(DMFC) |
---|---|---|---|---|---|
燃料 | 水素(改質ガス) | 水素、一酸化炭素(改質ガス) | 水素(改質ガス) | メタノール水溶液 | |
電解質 | リン酸 | 炭酸リチウム、炭酸カリウム | 安定化ジルコニア | イオン交換膜 | |
イオン伝導種 | 水素イオン | 炭酸イオン | 酸素イオン | 水素イオン | |
動作温度 | 約200度 | 約650度 | 約1000度 | 常温〜約100度 | 常温〜約50度 |
固体高分子形ないしダイレクトメタノール方式の燃料電池は、動作温度の低さが特徴。上記表の方式以外のモバイル向け燃料電池の検討も行われている。
ドコモとアクアフェアリーで共同開発した、PEFC型燃料電池を用いたFOMA用充電器の試作機(2006年7月に公開。左)。
数年後の商用化が見込まれるクレードル型の充電器(中)と水素タンクと反応セルも含む端末内蔵型(右)
数年後の商用化が見込まれるクレードル型の充電器(中)と水素タンクと反応セルも含む端末内蔵型(右)
ちなみに、歌野氏は携帯用燃料電池の具体的な要求条件として
- 安全性・品質の向上(リチウムイオン電池と同等の安全性試験による確認、短絡防止・過放電によるセル保護回路などの追加、特性劣化の検出や残存容量の明確化)
- 発電時の電力(充電時:約3〜4ワット/5.4ボルト、直接駆動時:約1〜2ワット/3.6ボルト。過渡的な電力の変化があるデジタル動作に追随する性能)
- 任意の方向で発電できる方向性(液面の変化による電気的な変化やガス排出の安定化など)
- 燃料の互換性や漏液対策、短絡対策、発電コストの課題を克服
の項目を挙げている。
歌野氏は「1、2年以内に外付けのクレードル・充電器型の燃料電池が商用化されるだろう」と展望を示し、将来的に端末内に燃料カプセルと反応セルを含める、完全内蔵型の実現を目指すという。
FC EXPO 2007会場で携帯用電池パック並みのサイズの燃料カートリッジを展示していた日本製鋼所(JSW)のブース。4.1NLの小型タイプから各サイズがある。右写真のタイプの水素貯蔵量は8.8NL(P903iの3.7ボルト/830ミリアンペアアワーのリチウムイオン電池とサイズを比較)。同社によると現在の携帯の平均的な電力消費量に換算すると1NLあたり約1時間の通話が可能という
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