「野蛮人」と蔑まれていた日本人観光客が「世界一」になったワケスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2015年08月04日 08時01分 公開
[窪田順生ITmedia]

「札束が歩いている」という対応

 日本人観光客の「マナー向上」に、フランスのように「客」として受け入れてくれた国が果たした役割は大きい。ああゆう国だ、内心は「野蛮人め」と蔑んでいたかもしれないが、「カネを落とす」という経済効果をとるために「熱烈歓迎」のポーズをとった。こういう対応を受けているうちに日本人も「観光客」としての立ち振る舞いを学んでいったのである。

 これは正しい。日本の中国人観光客への対応もこれでいいと思っている。

 中国人観光客がたくさんやって来るので、インバウンド消費が増えているのは紛れもない事実だ。赤字続きだった富士山静岡空港は中国航路が3倍になったことで、空港ロビーは人で溢れかえっている。東京、富士山、大阪というゴールデンルートには経済効果を生んでいる。彼らを「札束」だと思えばいいのだ。

 よく「観光立国」に反対している人は、「日本は外国人観光客に頼るほど落ちぶれていない」みたいなことを主張されているが、事実として落ちぶれている。経済産業省が2010年にまとめた『産業構造ヴィジョン』にはハッキリと「日本経済の行き詰まり」と明記されている。

 技術がスゴい、日本人には世界に誇るうんたらかんたら、というのは一部の企業であって、これまで何の効果も出ていないことからも分かるように、日本の地方経済が蘇るものではない。世界に誇る技術もない、かつてのように公共事業でも食えない地方の人々が潤うような施策で、しかも具体的に実現できそうものは今のところ「観光立国」くらいしかない。

済産業省が2010年にまとめた『産業構造ヴィジョン』に「日本経済の行き詰まり」が明記されている

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