「野蛮人」と蔑まれていた日本人観光客が「世界一」になったワケスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2015年08月04日 08時01分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。


 先週、TBSの『Nスタ』で「外国人観光客の迷惑・危険行為」が特集されていた。

 山梨県忍野村(おしのむら)にある忍野八海(おしのはっかい)の池で、外国人観光客が大量のコインを投げ入れて、地域住民がかなり問題視しているとか、民家の敷地内に中国人観光客が入ってパシャパシャと記念撮影をするなんてトラブルを紹介して、VTRの終わりには「あなたのまわりの疑問や怒り! 情報提供をお願いします」とテロップを出して情報提供まで呼びかけるチカラの入れようだった。

 TBSといえば『噂の東京マガジン』のように住民の反対運動を煽(あお)って、それで大騒ぎするというマッチポンプを得意とするので、この「不届き外国人観光客に住民の怒り爆発」もコンテンツ化する気マンマンなのはよく分かる。ただ、このようなトレンドの兆しは他メディアにもみられる。今後、テレビや新聞で「外国人観光客叩き」が増えていくだろう。

 訪日観光客数が右肩上がり、オリンピックへ向けて「観光立国」の機運が高まっているなかで、「しかし、いい話ばかりじゃありません」と逆張りを打つのはメディアの性(さが)みたいなものなのだが、世界的にみても「野蛮な外国人」というのは、数字がとれるキラーコンテンツの側面があるのだ。

 例えば『読売新聞』にこんな記述がある。

 至る所で、たばこを吸い、吸いがらを捨てる。とくに男性の団体客は傍若無人だ。「カネを払うから、島巡り遊覧飛行の窓際座席を確保してくれ」と要求する客もいる。「先着順に着席です」と断る。と、客は空港のゲートが開いたとたん、全力疾走して行列を追い抜く。それをアメリカ人が冷笑して見ている。

 やれやれ、これだから中国人観光客はと顔をしかめる人も多いかもしれないが、実はこれは「日本人観光客」の行動なのだ。

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