オムニチャネルに躍起になるスーパー各社、成功のポイントは?小売・流通専門家に聞く(1/2 ページ)

» 2015年08月07日 08時00分 公開
[伏見学ITmedia]

実店舗の仕組みは限界に

 海外の小売業では4年ほど前からオムニチャネルを推進する動きが活発で、あらゆる購買チャネルをシームレスにする「シームレスリテーリング」という言葉も登場しました。日本では2014年が「オムニチャネル元年」と呼ばれることもあるように、企業での取り組みが本格化したのは最近です。

海外のスーパーマーケットでは英Tescoのオムニチャネル戦略が有名。写真はスマホアプリでバーコードを読み取ると商品が購入できる自動販売機(出典:YouTube) 海外のスーパーマーケットでは英Tescoのオムニチャネル戦略が有名。写真はスマホアプリでバーコードを読み取ると商品が購入できる自動販売機(出典:YouTube

 もちろん、これまでも小売業のECサービスは存在していて、スーパーマーケットでは2000年に西友が、2001年にはイトーヨーカドーがネットスーパーを立ち上げています。そこからいくつかの企業がネットスーパーに参入したのですが、現在まで多くの場合、実店舗とネット店舗で、物流や在庫管理、マーチャンダイジング(MD)といったシステムがバラバラという状況です。

 その結果、何が起きるのでしょうか。在庫管理の一元化ができないなどの非効率性に加えて、顧客に対するサービスにも影響してきます。ポイントサービスを例にとってみると、実店舗では買い物ポイントなどを多数集めている常連客が、ネット店舗ではステータスが低く、お得な割引サービスを受けられないといったことが生じます。こうした状況だとせっかくのロイヤルカスタマーを逃すことになりかねません。

 これまでスーパーが積極的に投資をしてこなかった背景には、EC事業が成長するかどうか不透明だったということもあります。ところが、仕入れや店舗オペレーション、物流などのコストを下げ、文字通り1円、2円の積み上げによって利益を出してきたスーパーの実店舗の仕組みが限界を迎えつつあるので、2〜3年前からECを強化すべくシステムの統合、再構築の動きが出てきました。また、改修を繰り返したつぎはぎだらけのPOSシステムやMDシステムをちょうど更新するタイミングで、本格的にオムニチャネルに舵を切ろうとするスーパーも出ています。

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