ユニクロはどこへ行くのか?構造的な問題(3/5 ページ)

» 2015年08月28日 07時18分 公開
[金森努INSIGHT NOW!]
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「バリュープロポジション」で考えるユニクロのポジション

 東洋経済ONLINEの記事が指摘している「商品価値と価格のバランス」を表すフレームワークでは「バリュープロポジション」という考え方がある。(図1)

 ユニクロは1997年ころから、GAP(ギャップ)をモデルとした製造型小売業 (SPA)の体制を構築し、「低価格・高品質商品」の展開を目指して、「最安値宣言」をしていた。同社の戦略の大きな転換点である、98年11月の原宿出店以前のことだ。当時、「最低価格で品質保証・返品自由」というコンセプトの象徴として、「これもこれも、返品してええのん?」とレジで服を次々脱いでいく大阪のオバチャンの強烈なCM流していた。つまり、最低価格で高品質の「スーパーバリュー戦略」を打ち出したのだ。

 低廉(ていれん)で高品質な「スーパーバリュー戦略」は実現するのが難しいゆえに抜群の差別化ポジションとなり得るが、継続するのも難しい。いつしか「最安値宣言」は公言されなくなり、変わって同社は自社製品品質面を徹底訴求するようになった。つまり、「高価値戦略」への移行である。

 妹ブランドである「G.U.(ジーユー)」で2009年3月に行われた戦略説明会で、「ユニクロはナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」と柳井社長が明言したことでも分かる。つまり、ユニクロは「高価値戦略」、G.U.は「グッドバリュー戦略」としてグループ内でポートフォリオを組んで棲み分けしていくとの宣言である。

 業界相場は「中価値戦略」のポジションに形成されるので、ユニクロの高品質は十分、競合優位なポジションであるといえる。だが、「スーパーバリュー」ではなくなったことを払拭(ふっしょく)するかのように、それ以降、品質面が過剰ともいえるほど強調されてきたように思える。同社にとっての品質とは、縫製面などのつくりにとどまらず、カシミヤなどの高級素材を導入したり、新素材を開発してそれをどんどん高性能化させたりすることを意味していた。

 だが、前述のように、いつしか高機能商品の比率の高まりなどとともに価格も上昇し、顧客から見れば、カジュアルウェアとしては「プレミアム戦略」のポジションになってしまったのではないだろうか。しかし、誰もユニクロをプレミアムだとは思っていないし、プレミアムなユニクロなんて欲しくない。それが、真っ先に「若者のユニクロ離れ」を引き起こし、その後現在の業績不振につながったのではないかと推察できる。

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