安保反対デモは「12万人」……なぜ警察発表の「4倍」なのかスピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2015年09月01日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ギャップ」は年を追うごとに激しく

 どちらの言い分に分があるかは個々の判断に委ねるとして、興味深いのは、この手の反戦平和運動の参加者数にまつわる「ギャップ」が、年を追うごとに激しくなっている点だ。

 1995年に沖縄駐留の米軍兵士が少女を暴行する事件が起きた。そこで催された抗議集会の参加者は、主催者発表で約8万5000人。一方、警察発表では5万5000人と、その差は「1.5倍」程度しかない。それが12年を経た県民集会では「2.5倍」、そしてさらに8年を経た安保反対集会になると「4倍」と右肩があがりで差が開いているのだ。

 この20年で、なぜここまで大きな開きがでてしまったのか。反戦平和運動にいそしんでいる方たちの主張を見る限り、「権力者が警察やマスゴミを使って情報操作をしているんだ!」というのが定説となっているようだ。

 否定はしない。確かにこの世界にはそういう例がごまんとあるからだ。例えば、2012年のロシアでは、プーチン大統領が復帰することに対して、モスクワで大規模な反対デモが開催された。主催者発表では10万人以上だったが、ロシア内務省は3万5000人と発表。「2.9倍」の開きがあった。

 今回の安保反対デモ並のギャップも確認されている。1991年、お隣の韓国光州市で催された「五・一八光州民衆抗争十一周年継承大会」という反政府集会があった。主催者発表では20万人が当時の盧泰愚政権を厳しく批判するために集まったというが、警察発表では約4万人。メディアは約5万人と報じた。ギャップを見る限り、今回の安保法政デモとかなり近いものがある。

 ということは、反対派のロジックでいけば、いまの安倍政権は、1987年に民主化宣言をしたてホヤホヤの韓国と同じくらいのダイナミックな情報統制や、市民運動弾圧の動きがあるということにもなる。それはそれで恐ろしい話だ。

(写真はイメージです)

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