自動車世界の中心であるCセグメント、しかし浮沈は激しい池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2015年09月07日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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求められる新しい価値

 Cセグメント各車種の浮沈を見ているとその舵取りがいかに難しいかがよく分かる。日本のCセグに君臨するカローラは、サニー、ファミリアを打ち倒し、シビックとの一騎打ちの様相を呈していたが、意外にも自陣営のプリウスにその座を奪われた。日産もマツダも、かつてのフォードのように再ブランディンングを行い、それぞれサニーをティーダに、ファミリアをアクセラに切り替えたが、どちらも往年の勢いはない。シビックは北米と欧州では現在も販売されているものの国内では2010年に通常モデルが、2012年にはスポーツモデルのTYPE-Rがカタログから消えた。

歴代サニーを代表する一台を選んだら、この二代目B110型だろう。モータースポーツでも長く活躍し、若者がクルマに乗る大きなきっかけになった一台だ 歴代サニーを代表する一台を選んだら、この二代目B110型だろう。モータースポーツでも長く活躍し、若者がクルマに乗る大きなきっかけになった一台だ
FFになったファミリアは、そのクリーンなスタイルと軽快な走りで大ヒット作となった FFになったファミリアは、そのクリーンなスタイルと軽快な走りで大ヒット作となった
ホンダの躍進を支えた成功作。シビックはやはりこのワンダー・シビックが大きなターニングポイントを作った ホンダの躍進を支えた成功作。シビックはやはりこのワンダー・シビックが大きなターニングポイントを作った

 少なくとも国内に関しては、Cセグは長期的地盤地下を続けている。ボディサイズの拡大によってBセグメントがかつてのCセグメントのニーズを十分満たすようになったことも無視できないし、より広さを求める層はミニバンに移行してしまったこともある。しかし、それ以上に、Bセグメントと違う「価値」を持たせることが難しくなっていることがある。さらには衝突安全テストの莫大なコストによる損益分岐点の押し上げと、かつては考えられなかった数々の電子制御の採用によって雪だるま式に増えるコストがCセグメントの存続を難しくしている。

 それでも世界全体を見渡せばまだCセグメントはその中心にあり続けている。しかし、その価値を揺るぎないものにする「ポスト・ゴルフの新しい価値」はまだどこのメーカーも見つけ出せていないのである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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