お客さんとの“距離”はどう? カウンターの幅は絶妙で微妙ご一緒に“おでん”いかがですか 2(2/3 ページ)

» 2015年10月09日 08時00分 公開
[川乃もりやITmedia]

脳は足りない情報を自動的に補完する

 距離のほかに、コミュニケーションをとりづらくしているモノがもう1つある。店内に流れるBGMや宣伝放送の音だ。

 環境省のWebサイト「大気環境・自動車対策」を参照すると、コンビニの店内の騒音は60〜70デシベル。これは、コーヒーショップやファミリーレストランの店内と同じくらいの数値である。

 それに対し、東京都環境局のWebサイトによると、人の話し声は約50〜61デシベル。店内のBGMよりも小さいので、人の声は聞こえづらくなってしまう。

 コンビニの店内はBGMなどによってコミュニケーションがとりづらい環境になっているが、店員たちは“経験”によってうまく対応している。どういうことか、具体的に説明しよう。

 上の図を見てほしい。片側だけを見ると何か分からないが、両方の図を見ると「R」という文字が浮かび上がって見えるはずだ。人間の脳は、見たり聞いたりした情報が欠けていると、記憶や経験をもとにその部分を補完しようとする。

 実は、店員もお客さんも、無意識のうちにこれと同じことをしている。例えば、店員がお客さんに意識を向けていない状態でタバコを頼まれても「えっ?」となってしまうが、あらかじめ、お客さんがタバコの棚のほうを見ていることに気付いていれば、「あっ、このお客さんはタバコを買うんだな」と予測できる。そういう心構えができていれば、カウンターを挟んだ距離でも、店内の騒音で声が聞きづらくても、「セ◯◯ス◯ー」を「セブンスター」と、補完して聞きとることができるのだ。

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