あまりにも配慮が足りない分類だが、調べてみるとこれは熊本だけではなく全国各地の図書館でも確認された。書籍を納入していたTRCの十進法分類法でそのように仕分けられていたからだ。通常、書籍を購入した後に図書館が独自判断をするのだが、大手で信頼のおけるTRCの判断を疑う者は少ない。結局、右から左で、全国の図書館に「からゆきさん=社会病理」が広まったというわけだ。
TRCも従来の公営図書館もCCCのことをバカにできないじゃん、などと主張がしたいわけではない。今、「TSUTAYA図書館」由来の問題として報道されているものの多くが、実は先達の者たちがかつて直面してきた「いつかきた道」に過ぎず、TSUTAYA図書館だから発生した固有の問題ではなく、図書館という公共機関が抱える構造的問題だということが言いたいのだ。
だから、とにかくTSUTAYA図書館が本と本を愛する人たちの憎き敵であって、こいつらさえいなくなればすべてがハッピーみたいな「スカッとジャパン」的な報道が蔓延(まんえん)してしまうと、問題の本質が見えなくなる。以前のコラムでも述べたように、これは日本の公営図書館をどうしていきたいのかという大きなテーマをはらんだ問題なのだ。
日本の公営図書館は、豊富な蔵書とスピーディーな検索サービスで本を愛する人たちから高い評価を得ている。が、一歩ひいて地域全体を俯瞰(ふかん)すると、ほんの一握りの市民しか利用をしていない現実がある。つまり、「一部の本好きだけが恩恵を授かる公共サービス」という側面があるのだ。
その傾向がこのまま改善されず、少子高齢化が進むと、公営図書館は自治体に重い負担を強いるコストセンターになるしかない。そこで、北欧やらで成功している「地域コミニティの人々が気軽に集う図書館」に変えていこうという動きが出て、だったら民間のノウハウを活用しましょうという流れになった。それが「TSUTAYA図書館」問題で一気にしぼんでいるのが今の状況だ。
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