世界は“報復”するのか? 「13日の金曜日」に虎の尾を踏んだイスラム国世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2015年11月17日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

NATOが攻撃に踏み切る可能性

 少し話が逸れたが、こうした多角的に行われる捜査で、イスラム国が今回のテロに関与している強固な証拠が出てきたり、さらなるテロ計画や脅威が見つかれば、NATOが攻撃に踏み切る可能性はさらに高くなる。

 過去にこのNATO第5条が発動されたのは、2001年に米国のニューヨークで発生した米同時多発テロの1度だけだ。当時はNATO加盟国の米国が主導し、第5条に則ってNATOはアフガニスタンでの作戦に参加した。フランスが主導してNATOがイスラム国への報復を行うことになれば、大規模な作戦によって、イスラム国との戦いは一変するだろう。

 ただ忘れてはいけないのが、イスラム国が掃討(そうとう)されたとしてもシリアの内戦は終わらないことだ。しかもイスラム国のさらなる国際化につながるかもしれない。それでも、シリアの問題とイスラム国を切り離す、いいきっかけにはなるはずだ。最近シリアに関与を強めている米国も、さまざまな組織が己の利害のために動き複雑に絡むシリア情勢の中で、いまだに誰に武器を提供するか、といったところで苦労している。イスラム国の存在感が小さくなれば、少なくとも、シリア問題を複雑にしている要素の1つを排除することになる。

 テロ直後の15日には、トルコで20カ国・地域(G20)首脳会議が開催された。この会議にはバラク・オバマ米大統領やロシアのウラジミール・プーチン大統領、中国の習近平国家主席など先進国の首脳が集結した。フランスのオランド大統領は欠席することになったが、NATO諸国は今回のテロにどう対処するのかを水面下で議論したと見られている。

 さらに関係各国は、シリアのバシャル・アサド大統領側と反体制派による協議を2016年1月1日までに開始することで合意した。アサド政権もこれには歩調を合わせているようで、イスラム国掃討作戦とシリア内戦終結に向けた取り組みがようやく前進することになりそうだ。フランスのテロがここにも影響を与えた可能性は高い。

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