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» 2015年11月30日 07時30分 公開

その後の人生を変えた沖縄戦大田昌秀の「日本を背負って立つリーダーたちよ」(3/3 ページ)

[大田昌秀,ITmedia]
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無学を恥じる

 そんな地獄のような戦場でしたが、人生を変える出会いもありました。

 避難していた地下壕の中に、東京文理科大学を出た白井という兵隊がいました。彼はウェブスターの「ポケット英英辞典」を戦場に持ち込んでいて、朝から晩まで暇さえあればこの辞典を読んでいたのです。

 沖縄戦が終わり、しばらくしてからも、日本の敗残兵たちが米軍のテント小屋に手榴弾を投げ込み、もぬけの殻になったテントにあったラジオやレコードを聴いてどんちゃん騒ぎをしていました。そして缶詰などを奪って壕に戻り、それを食べて生き延びていたのです。僕なんかがテント小屋に行ったときには、既に兵隊に食糧は全部取られていて、散らかった雑誌や新聞があるだけでした。それを拾って白井さんに持って行って見せたら、彼がすらすらと読んで、「もう日本は戦争に負けてる」と言ったのです。

(出典:USMC Archives) (出典:USMC Archives

 それまで僕らは、英語は敵性言語といって、勉強するのを禁止されていました。だからまったく英語が読めませんでした。そうした中、白井さんが英字新聞などをすらすらと読んで、日本がポツダム宣言を受諾して降伏したことを教えてくれたのです。

 ただし、周辺の敗残兵に日本は負けたと言ったら、2人とも殺されるから、いっさい言うなと口止めされました。そのとき僕は戦争に負けた悔しさよりも、自分がまったく英語の読めない無学、学問のなさにショックを受けたわけです。

 その時点ではまだ周辺を敵に囲まれていて、生き残る可能性がないときでした。僕が白井さんに「いいですね、こんなに外国の言葉がすらすら読めて」と言ったら、彼が「大田くん、もし生き残ることができたらね、君も東京に来て、英語を勉強しろよ」とだけ言ってくれました。この一言が文字通り、その後の僕の人生を決めたわけです。(談)

(構成:伏見学)

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