ショッピングモールが死んでいく2009年ごろからバタバタと(1/2 ページ)

» 2015年12月07日 07時00分 公開
[純丘曜彰INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:純丘曜彰(すみおか・てるあき)

大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科哲学教授。玉川大学文学部講師、東海大学総合経営学部准教授、ドイツ・グーテンベルク(マインツ)大学メディア学部客員教授を経て、現職に至る。専門は、芸術論、感性論、コンテンツビジネス論。自らも小説、作曲、デザインなどの創作を手掛ける。


 廃墟と化したデッドモールは、日米欧中、全世界で共通の現象。取りあえずうまくいっているところでも、母親や老人の公園代わりの暇つぶしの場となってしまっており、若者は少ない。ネットモールの隆盛と、晩婚化・独身化・少子化があいまって、家族と車という前世紀的ライフスタイルに依拠した郊外型モールという業態そのものが、長期的には死に向かっていっている。

 生ける廃墟、稼働4/200店、などと揶揄(やゆ)されたピエリ守山が2014年12月17日に華々しくリニューアルオープンして、かれこれ1年。だが、調子が良かったのは、最初の数カ月だけ。昨今、早くももう、あまり芳しいウワサは聞かない。リーマンショックのせいだとか、立地が近隣競合がとか、いろいろ言われたが、再生もできずに、事実上潰れ去ったショッピングモール、アウトレットモールは、大阪貝塚のコスタモール(1999〜2009)、岐阜のリバーサイドモール(2000〜10)、千葉のコンサート長柄(2004〜09)など、数知れず。このほか、閉店したダイエーの専門店街などまで入れれば、さらに膨らむ。まだ潰れていないが、潰れるのは時間の問題というところも各地に点在。

 しかし、これは日本だけの問題ではない。郊外型モールという業態を展開してきた米国は、今や全州が「デッドモール」だらけ。その先駆けの1つ、セントルイス州クレスウッドコートは1957年にオープン、157店舗あったが、2013年に閉鎖。ドイツでもシュヴェニンゲンにできたレスレ・ショッピングセンター(2010〜)が開業当初から廃墟状態で、いまだにもめ続けている。2350店営業可能と世界最大を誇る中国の華南モール(2005〜)は、わずか数店のみでもなおまだ営業中とか。

 後発のものは、いかにも計画そのものの失敗のように見えるが、全体を見れば歴史のあるものも含め、実は2009年ころからバタバタと潰れ始めた、と言った方がいい。2009年と言えば、2007年末からのサブプライム、08年9月のリーマンショック、そして10年のユーロ危機に続く経済混乱の時期だが、このころになってもなお、不景気や海外移転で国内の古い大規模工場などが売却され、その跡地に新規に郊外型モールが計画され続けた。そして、イオンモールやララポートなどのように、うまく軌道に乗ったところもある。つまり、郊外型モールの衰退を、一概に経済状況悪化のせいにはできない。

 むしろ重要なのは、この時期にamazonをはじめとするネットモールが一般化してきたこと。また、世界的に晩婚化・独身化・少子化の傾向が見られ、2009年に大型車を得意としてきたGMやクライスラーが破産。家族が車でこぞって郊外型モールに出掛ける、というライフスタイルモデルが消滅。クリスマスだから、ボーナスが出たから、との「ブラックフライデー」の年末商戦とやらも、勤め先の雲行き怪しく、年功序列の定期昇給を当てに大きな郊外新築住宅を買って長期ローンを組める時代でもなし、日米欧中、どこもともにもはや過去の話。

amazonなどのネットショッピングが一般化したことで、実店舗に行く必要がなくなった
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