過去最高の売上! 米国人が銃を“爆買い”するワケ世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2015年12月08日 10時25分 公開
[山田敏弘ITmedia]

すぐに銃規制が行われることはない

 では2015年のブラックフライデーの場合はどうだったのか。まさにブラックフライデーの11月27日、コロラド州の中絶を行う医療機関で、3人が殺害され、9人が負傷する銃乱射事件が発生している。ただ実際には、この事件だけが原因ではなさそうだ。というのも、銃の売り上げは2015年、ブラックフライデーに限らず、年間を通して例年よりも増加しているからだ。

 例えば11月だけを見ても、銃購入時の即時犯歴照会システムを通してFBIが照会を行った件数は224万3030件に上る(参照リンク)。実のところ、5月以降すべての月で、銃の販売数は前年を超えており、このままいけば年間最高記録(現在は2013年)を更新するとみられている。

このままいけば銃の購入件数は年間最高記録を更新する見込みだ

 銃のセールスが例年よりも増加している理由は、銃による事件が頻発しているからだと見られている。2015年、いわゆる「銃乱射」事件は352件も発生している。ちょっとややこしくなるが、「銃乱射(Mass Shooting)」の定義は、4人以上が銃で撃たれたケースを指す。米国では銃乱射事件が年間(365日)を通してほぼ毎日のように発生していることになる。そしてその傾向がブラックフライデーにも波及したということなのだ。

 最近も悲惨なニュースが起きている。2015年12月2日、カリフォルニア州サンバーナディーノで銃乱射殺人事件が発生して日本でも取り上げられた。2015年353番目の銃乱射事件である。男女2人が福祉施設を襲い、クリスマスパーティー中だった職員ら14人を銃で殺害し、21人を負傷させた。

 こうした銃による大惨事が起きると、もはや恒例であるが、国内では銃規制の必要性を訴える声があちこちから噴出する。それは当然で、米国はOECD(経済開発協力機構)諸国の中でも特に犯罪の多い国であり、殺人事件の3分の2は銃による犯行だからだ。今回もバラク・オバマ大統領が「大統領令」を出して対処すると言ってみたり、日曜夜に全米生中継でホワイトハウスから緊急スピーチを行ったり、ニューヨークタイムズ紙は銃規制を求める論説を1面に異例掲載したりしている。だがはっきり言うが、これまでの事件同様、すぐに銃規制が行われることはないだろう。

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