これはもちろん必要かつ有用だと思う。しかし約1年前の文科省の文書が効果を発揮していないことは、2015年になってもブラックバイト問題が収まらないどころかますます広がっていることからも明らかだ。
では効果的な打ち手は何で、誰が動くべきだろう。第一義的には、大学の事務局だと考える。なぜ大学か? 学生の味方は大学なのだから。そしてそもそも大学の授業料の高騰(とう)が原因の一端にあることを自覚したら、「それは役所に相談してください」などの逃げ口上は出ないはずだ。
学生からの相談を受け付けて親身になって相談し、毅然(きぜん)とした態度をとるように指導することが最低限、必要だ。そして場合によっては事務局スタッフが相手企業に(まずは電話した上でだが、相手が曖昧な態度をとるなら)乗り込んで抗議し、それでもらちが明かないなら裁判に訴えてでも白黒をつけようという態度を見せるべきだ。
この点に関し、「それはまず親がすべきじゃないか」という意見があろう。自宅から通っているごく普通の学生については小生もそう思う。まず親が相談を受けて、助言し、抗議すべきだ。
しかしこうしたブラックバイトの被害に遭う学生の多くは往々にして、仕送りをしてくれる親に心配を掛けたくない地方出身の学生だという。ならば離れて住む親が、わが子がこうした事態に苦悩している事実さえ知ることは、現実的には難しい。
また自宅通学の学生でも、経済的理由による極端な多忙や他の子どもの養育などの理由で親が子供の相談に応ずる余裕がないことも十分に考えられる。そんな親に相談できないからといって学生を突き放すことは理不尽だろう。
従って、彼らが学業を第一に没頭できる環境に近づけるようサポートする義務かつ現実的可能性を持つのは大学、しかも事務局ではないか(世間知らずが多いとされる大学教員を頼ることは筋違いだろう)。
あらためて請う。大学事務局諸氏には、ニッポンの明日を背負う若者をブラックバイト企業の毒牙から守るため、ぜひ立ち上がって欲しい。言い換えれば、こうしたイシューへの対応次第で、親はその大学の実力と覚悟を評価するのだ、と肝に銘じて欲しい。(日沖博道)
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