日本の女性活躍に向けた5つの優先施策とは?(1/6 ページ)

» 2015年12月18日 13時55分 公開
[Strategy& ]
プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー株式会社

 近年日本国内でも女性の活躍できる環境の整備の重要性が指摘され、各種の取り組みが進んでいる。女性の活躍できる環境とは、即ち、多様かつ柔軟な組織が実現されていることであるが、これはまさに、多くの日本企業の今後の成長にとって必須なものである。

 本稿は、企業のみならず、国として、女性の活躍できる環境を整え、将来の豊かさの前提条件を整えるために、優先的に取り組むべき課題を明らかにするものである。

 日本の経済構造は今、大きく変容しつつある。自然災害からの復興と、20年にわたる経済停滞を断ち切るため、日本は経済成長重視の方向へと舵を切った。日本は、その目標を達成するために、これまで長きにわたって守り実践してきたさまざまな慣例も、再考しようとしている。このような空気の中、職場における女性の役割を問い直すことも、喫緊の課題として浮上してきている。

 Strategy&が行った、世界での女性の社会進出に関する調査の結果、日本の変革に女性の活躍が寄与し得ることが判明した。

 日本の女性の教育水準は既に高く、社会進出するための下地は整っている。女性の大学・短大への進学率は56%で、男性と同水準である。また、大学院修了者も男性の15%よりは低いものの、6%存在している(※1)。しかし、ビジネス界となると話は別となる。

 日本の女性はキャリアの早い段階で離職し、その後は非正規の従業員として働くケースが多く、組織において重要な責任のある地位にはほとんど就かないというのが現状である。

 我々の推計では、女性の社会進出を男性と同水準まで高められれば、日本のGDPを9%増やすことができる。しかしそれ以上に、より多くの女性が責任と権限を伴う高い地位に就くようになれば、創出できる価値は計り知れないほど大きい。

 日本企業はこれまで、同質性の高さ(ダイバーシティの少なさ)による意思疎通の良さを強みの源泉と考えてきたが、日本がグローバルなビジネスチャンスをとらえて新たな経済成長軌道に乗るためには、組織の構成員の多様性、組織の柔軟性を高めていかねばならない。日本企業は今後、さらにグローバル化を推進することに加えて、生産性を高め、健全なリスク・テイクを行い、起業家精神とイノベーションを強化する必要がある。そのすべてにおいて、企業内に多様な観点を取り入れることが重要であり、女性の声だけでなく、その他高齢者、障がい者などの少数派(マイノリティ)、若年層、海外経験者、中途採用者などの声も、積極的に取り入れていく必要がある。

 政府は、アベノミクスにおいて「女性が輝く日本」を提唱、安倍首相が2014年1月の世界経済フォーラムでの演説で、「いまだに活用されていない資源の最たるもの。それが女性の力ですから、日本は女性に、輝く機会を与える場でなくてはなりません」と述べている。そして、2020年までに政府と民間企業における指導的立場の3割を女性にするという目標を掲げて、決意を再表明した。

 Strategy&では、日本がこの大きな目標を達成するために何が必要かを明らかにするために、役員・部長クラスの女性たちへのインタビューを行った。その結果、成功を阻害する最大の要因は、典型的な日本の職場にいまだに根強く残る硬直性であると判明した。

 今回のインタビュー結果を受けて、労働力の柔軟性を高め、女性たちがその能力を最大限に活用できるようにするために日本企業が行うべき、次の5つの優先施策分野を特定した。

「経営トップのリーダーシップ」

「組織の変革への取り組み」

「指標の共有」

「先入観を排除する」

「他の組織との協働」

 各々の企業が率先して施策を推進しなければ、日本がその目標を達成することはできない。日本全体が経済的に繁栄するような変革を実現するには、企業が行動を起こさなければならない。より多様で柔軟な職場作りに成功を収めた企業が、新たな競争優位性を確立できるのであり、その優位性がさらに、今後10年間の持続可能な成長の基盤となるのである。

※1 文部科学省の「2012年度学校基本調査」

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