日本の女性活躍に向けた5つの優先施策とは?(4/6 ページ)

» 2015年12月18日 13時55分 公開
[Strategy& ]
プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー株式会社

柔軟性のない職場モデル

 日本は終身雇用制が失われつつあると言われるものの、真面目で忠誠心が高い労働力と、安全、快適かつ健康な暮らしを支える各種の制度的なインフラや、強い団結力をなお有している。実際に1人当りGDPは今も増加中である。ならば、なぜ日本は変革する必要があるのか?

 実は、日本の1人当りGDPが上昇しているのは、経済が成長しているからではない。日本の人口が減少しているためである。ゆくゆくは、マクロGDPの縮小に起因して、一人当たりGDPの縮小ももたらされる。実際に、世界における日本の競争力は既に低下していると言われている。日本における製造コストは高く、ホワイトカラーの生産性は低い。国内需要がせいぜい横ばいであるため、日本企業は海外市場に成長を求めるしかない。しかし近年では、日本は、隣国の韓国や中国に、技術や生産プロセスのイノベーションにおいても、グローバル展開においても後れを取っていると言われるようになってきた。

 日本は成長するために、人材を全面活用していかねばならない。女性、中途採用者、若年層に積極的に機会を与え、能力を遺憾なく発揮できるようサポートする必要がある。そのためには、同質性の高さに依存してきた伝統的な日本の職場モデルを変革し、特に「多様性(ダイバーシティ)の欠如」と、「組織の硬直性」という、相互に関連した、しかし独立した課題を解決することが必要である(図表5参照)

図表5 成長を可能にする職場は多様かつ柔軟である 図表5 成長を可能にする職場は多様かつ柔軟である

多様性の欠如

 多くの日本の大企業は見事なまでの均質性を保っている。役員はおろか、管理職も、年功序列の頂点に立つ新卒生え抜きの日本人男性が占めている。一部には、女性や中途採用者、外国人などがいるものの、組織の均質性に調和できる人材に限られる。年功序列なので当然のことながら、新卒生え抜きの日本人男性であったとしても、20〜30代の「若者」が公式にリーダー的な地位に就くことはほとんどない。

 長い勤続年数の中で組織内の調和を重んじてきた人材が重用される結果、リスクを避ける風潮は強くなり、一定のリスクをとることが前提となるイノベーション文化は育たなくなる。伝統ある大企業では、会社の未来を担う「エリート」と認定されると、むしろ経歴に傷がつくリスクのある(逆に言うと、イノベーションの機会もある)ような地位に就かせなくなってしまい、まして社外への流出の原因となり得る海外赴任や、他社へは出向させない傾向にある。そうして保たれた均質性の結果として、消費者の大多数を占める女性や若年層などについての洞察が弱いものになってしまう。海外顧客や海外パートナーに対する洞察は、さらに浅いものになってしまう。

組織の硬直性

 日本の「サラリーマン」は、極めて画一的な会社員人生を送る。多くの大企業では、特定の大学から新卒の学生を毎年採用し、社員は定年までその会社、あるいは子会社に勤め続ける。給与や昇進は通常、年功序列で決定され、日本人男性であっても、若いうちは重要な権限を与えられず、企業における年次に応じた昇進・昇給を待つしかない。業績連動の賞与はあっても微々たるものであるため、高い業績を挙げようとするインセンティブも働かない。

 それにもかかわらず、会社での長時間労働は当然のことと期待され、(家庭や社会、趣味などの)仕事以外のことに時間を使うことは難しい。日本企業における「多方面への過剰な根回し」、つきあい残業、時間外の「飲みニケーション」など“直接、顔を合わせる時間を取る”ことの重要性は、海外現地法人に採用された外国人社員などから見て、常軌を逸していると映る。

 このように長時間労働を求められる慣習があるため、子どものいる女性のように、在宅勤務などの柔軟な勤務制度を活用する必要のある社員にとって、キャリアを続けることが特に難しい問題となってしまう。

 これらの状況から鑑みれば、キャリアを築いた日本人の女性たちが、働きやすい会社として挙げた上位10社のうち5社が外資系であることは驚くに値しない。多国籍で展開する外資系企業は、日本人女性が提供する価値を確実に認めており、今後も女性たちの中でも最も才能ある人材は外資系企業に流出し続けるであろう。

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