東向島珈琲店に地元の人が引き寄せられる理由人と人、人と街をつなぐカフェ(2/4 ページ)

» 2015年12月29日 08時30分 公開
[川口葉子ITmedia]

 試行錯誤を重ねたレアチーズは、さわやかな風味とふんわり優しい食感で人気が高い。乳白色に彩りを添える季節のフルーツソースもカウンターの中で手作りされており、2012年に墨田区の「すみだ地域ブランド推進協議会」が認定する「すみだモダン」ブランド認証(関連リンク)を獲得した。

 2013年には「抹茶のリオレ」が同認証を取得。これは地元の事業者たちとジャンルを超えて連携したいという井奈波さんの思いから生まれたお米のスイーツで、食材はもとより器やカトラリーにいたるまですべて墨田区の職人魂が結集して一皿を作り上げている。

すみだモダンの認証を獲得したレアチーズ すみだモダンの認証を獲得したレアチーズ

 材料のお米は創業100年を超える老舗米店、隅田屋商店がリオレのためにブレンド。チタン製のスプーンは、下町の町工場が力を合わせた深海探査艇「江戸っ子1号」開発への参加など、異業種連携事業に積極的な浜野製作所が担当。スプーンとぴったり合う形にくぼみをつけた美しいガラスの器は硝子企画舎が携わる。ものづくりの伝統が息づく街の魅力を知らしめるメイド・イン・スミダのスイーツである。

 井奈波さんがコーヒーを淹れるカウンター。その前に並ぶ3客の椅子が人と人のつながりの舞台だ。井奈波さんが触媒となってお客同士の「良いところ、得意なこと」を紹介すると、引き合わされた人々の間に化学反応が起きて新しい仕事やイベントの計画が動き始める。

 「ここはきっかけづくりの場です」

 井奈波さんはそう語る。きっかけさえ生まれれば、あとは当事者たちが協力し合って計画を育てていけばいい。隅田川そばの牛嶋神社で開催される手づくりマルシェ「すみだ川ものコト市」のメンバーや、コミュニティー型クリエイター集団「すみだクリエイターズクラブ」面々も東向島珈琲店の常連客だ。

 最高の触媒となるにはどんな資質がふさわしいのだろうか。

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