東向島珈琲店に地元の人が引き寄せられる理由人と人、人と街をつなぐカフェ(1/4 ページ)

» 2015年12月29日 08時30分 公開
[川口葉子ITmedia]
地域交流のハブ的存在になっている東向島珈琲店 地域交流のハブ的存在になっている東向島珈琲店

 東京スカイツリーからほど近い東向島一丁目の交差点のそばに、街のハブ的役割を果たし、墨田区界隈の人と人をつなぐ拠点として有名なカフェがあるのをご存じだろうか。

 店内ではご近所の老若男女をはじめ、アーティストやものづくりをする人々が思い思いにくつろいでおり、一杯ずつドリップされるコーヒーとおいしい一皿を介した談笑の中で、心踊るアイディアが温められ、実現に向けて立ち上がっていく。

 そのカフェの名は東向島珈琲店、通称「ヒガムコ」。木製の家具が並ぶその空間は人と街を活気付けるアイディアのゆりかごだ。単に人に出会いをもたらすだけでなく、地元を盛り上げるようなさまざまな商品や企画がこのカフェから誕生しているのである。誠実な仕事で人々の信頼を集めるマスターは井奈波康貴さん(41)。柔らかな空気をまとう彼の存在こそがヒガムコをヒガムコたらしめているのだ。

墨田区の地域ブランドにも

 ヒガムコから生まれた名作を挙げてみよう。それらは「共存共栄という形が自分にとって一番心地がいい」という井奈波さんの姿勢を反映して、街の人々にも利益をもたらすことを意図して生み出される。

活版工房など地元の企業や団体とのコラボレーションは不可欠だ 活版工房など地元の企業や団体とのコラボレーションは不可欠だ

 例えば、自家製ドレッシングが気に入ったので販売してほしいという常連客のリクエストに応えて商品化した「下町の小さなカフェのドレッシング」は、地元で活動するデザイナーにパッケージ制作を依頼している。四角いガラス瓶にラベルを貼った完成品はセンスの良さで目を引くが、そのラベルは活版印刷だ。活版工房が東向島珈琲店で6年間に渡って活版印刷体験イベントを開催していた縁で採用したのである。印刷されたラベルを貼る作業は区内の福祉作業所が行う。

 かかわった人々に小さな幸福をもたらし、上品な甘酸っぱさでサラダを引き立てるこのドレッシングは、墨田区のさまざまな取り扱い店で購入できる。さらには話題が広まり、地元以外の飲食店や催事などでも販売されるようになった。

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