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ギャンブル化した年金運用 それでも破綻しない年金の仕組みとは?3分で読める 荻原博子の今さら聞けないお金の話(1/2 ページ)

» 2016年01月18日 08時00分 公開
[荻原博子ITmedia]

荻原博子の著者プロフィール:

 1954年生まれ。難しい経済やお金の仕組みを生活に根ざして分かりやすく解説し、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。

 バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。

 「どんとこい、老後」(毎日新聞社)、「お金は死ぬまえに使え」(マガジンハウス)、「ちょい投資」(中央公論新社)、「荻原博子式年金家計簿2016」(角川書店)、「10年後に破綻する人、幸福な人」(新潮社)など著書多数。


3分で読める 荻原博子の今さら聞けないお金の話:

 「え、そうだったの!?」

 年金、医療保険、介護保険、教育費、投資。私たちの生活に密接な制度や仕組みについて、きちんと理解していますか?

 本連載では、いま話題になっているけど今さら聞けない、身近なお金に関する仕組みや制度のことを経済ジャーナリストの荻原博子が分かりやすく1から解説していきます。


 昨今、高齢者の貧困が問題になっており「老後破産」「下流老人」といった言葉をよく耳にします。そんな中、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年7月〜9月の間に7兆8899億円もの損失を出したニュースに、多くの方が不安を感じたことでしょう。

 年金積立金の運用では、2008年度のリーマンショック時に9兆3000億円という損失を出していますが、これは1年間での損失。2015年の約8兆円の損失は4半期としては戦後最大の赤字ということになります。

 大幅損失の原因は、世界同時株安の影響という説明ですが、リーマンショックと比べたら、今回の世界同時株安などはたいしたことはありません。それなのに、なぜこんなに赤字幅が大きくなったのか。それは、株などのリスク商品で運用する比率が上がっているからです。

リスク資産を増やし、未知の運用へ

 政府は、過去の実績から「長期的に見ればプラスが大きいのだから、今回の損失はたいしたことはない」と言います。確かに、過去にさかのぼって見ると、プラスの方が大きいです。けれど、この過去の実績というのは、年金積立金の多くをリスク投資に移す前の実績です。

 平成25年度末までの年金の運用は、安全な国内債券55.43%、リスクがある国内株16.74%、外国株15.59%、外国債券11.06%、その他1.46%で、約6割が安全確実な投資商品で運用されていました。

 この安全運用の国内債券を35%まで減らし、リスクがある国内株を25%に、外国株を25%に、外国債券を15%にと増やしたのが現在の運用方針。つまり、これまでに比べて年金の運用はハイリスク・ハイリターンになっています。

 政府の「長期的に見ればプラス」という考えの根拠は過去の実績にありますが、現在のようにリスク資産を増やした後の運用についての実績はまだほとんど出ていないので、どうなっていくのかは未知数なのです。

photo 安全資産を減らしリスク資産を増やして運用(出典:海外投資データバンク)

 年金の運用がハイリスク・ハイリターンになったのは、日本の株価を年金などの公的資金が買い支えるためです。安倍政権は、株価を高く維持しておかないと支持率も下がると考えているようで、私たちの大切な資産である年金の積立金を、必要以上に株式市場に投資しています。

 日本の株式市場が、年金などの公的資金で買い支えられていることは自由経済にとっては不自然です。実際、2015年上半期に単体で最も日本株を買い越していたのは日銀で、約1兆5000億円の買い越しでした。

 日銀や年金が株を買えば日経平均は上がりますが、問題は買った株を売れないということ。「日銀や年金が株を売る」といううわさが流れただけで、日本株でぼろもうけをしていた外国人たちが一斉に株を売って日本市場から逃げようします。

 市場がパニックになりかねないので公的資金は、株を買うことはできても、売るに売れないのです。結果、最後に逃げ後れた私たちの年金などの公的資金が大打撃を受ける可能性があります。

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