このように芸能報道と政治報道が丸かぶりしているとなると、これからのSMAPの行方を占ううえで非常に興味深い事例がある。
「加藤の乱」だ。
16年前、「首相候補最有力」とまで言われた加藤紘一氏が盟友・山崎拓氏とともに自身の派閥を率いて、森首相に辞任を迫る野党の不信任決議案に同調しようと働きかけた倒閣運動のことだ。
当時、「このままでは自民党どころか日本が壊れてしまう」と訴えた加藤氏は「政界のプリンス」なんてもてはやされていた。まだネットがここまで普及していないなかで加藤氏のWebサイトは1日に5万件のアクセスがあって、激励メールが多数寄せられたという。そんな国民的支持に加え、野党とも連携することで、「勝算あり」と見込んで決起したわけだ。
が、自民党執行部が除名処分をちらつかせて加藤派の切り崩しを行ったことでこの動きは頓挫。謀反の責任をとって加藤氏は、ひとり内閣不信任案に賛同しようと議場を目指すものの、側近だった谷垣禎一氏らから「大将がひとりで突撃なんてダメですよ」「死ぬも生きるも一緒だ」なんてたしなめられるという任侠映画さながらのやりとりが全国に中継された。
おいおい、脂ギッシュな政治家の権力闘争と今回の騒動を重ねるな、とSMAPファンからお叱り声をいただきそうだが、国民的支持を得た「人気者」たちが自分たちでイニシアチブをとろうとしたところ、巨大勢力から「クーデター」として鎮圧されるという結末もさることながら、そこでかわされた「メディア戦」という点では両者は驚くほど似ている。
まず、分かりやすい共通点としては、勝敗が決した後も謀反を起こした首謀者に対して執拗(しつよう)なまでにマイナスのイメージ付けが行われる点だろう。
例えば、1月22日(金)に発売された『FRIDAY』が、騒動後初の番組収録に現われた4人が「憔悴しきっており」と報じ、なかでも特に痛々しいのが中居くんだった、と「テレビ局関係者」が述べている。
「生気がまったくなく、目はうつろ。まるで敗残兵のようでした……。全員無言で、すぐ局から出て行きました」
この「テレビ局関係者」にそのように映ったとしたらしょうがないのだが、「敗残兵」というのは加藤・山崎両氏を評する報道でもよく用いられたように、政治抗争の文脈に登場する表現だ。つまり、今回の騒動を「中居の乱」だったということを強く印象付けたいという思惑が感じられるのだ。
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