インドではスズキが独走しているが、それを各社が追いかけ始めた。まだまだスズキのアドバンテージは大きい。これは極めて勝手な推論だが、ダイハツを完全子会社にしたということは、トヨタがダイハツのライバルであるスズキにちょっかいを出せる体制が整ったと見ることもできる。
これまでのようにダイハツの立場を忖度(そんたく)する必要はなくなり、全てトヨタの都合で決めることができる。スズキはスズキで、唯一無二のカリスマ、鈴木修会長の高齢という問題が差し迫っている。安全、環境、コストなど開発のハードルが年々上がっていく状況下で、事業継続していくためには基礎体力がものを言う。いつまで独立独歩で行かれるかは定かではない。そのとき、スズキが組んでメリットのある相手は事実上、トヨタかルノー・日産だけだと筆者は思っている。インド・マーケットが手土産ならば、どこのメーカーでも揉み手をして迎え入れるだろう。それに伴いグループ内のパワーバランスがどうなるかまではさすがに予測しかねるが。
さて、こうしてトヨタはダイハツを自社の世界戦略の中に組み入れた。誰でも良いところを任せたのではなく、ダイハツの力量を見込んで、適材適所に置いたのは事実だと思う。
トヨタにとって国内の話はおまけに過ぎないかもしれないが、これでダイハツの軽自動車をトヨタの販売店が扱うことのハードルも下がった。ダイハツの軽をトヨタが本気で売ったら、軽自動車のマーケットは5割を軽く越えかねない。スズキにとってそれは打撃だろうが、既にスズキは国内販売台数をインドでの販売台数が上回っている。致命傷にはならないように思う。しかし、軽自動車に浮沈がかかっている日産とホンダにとってはかなり深刻なダメージになるかもしれない。引き続き、完全子会社化以降の国内販売戦略についても積極的に取材をしていきたいと思う。
トヨタとダイハツの新しい一歩は、少なくとも世界戦略的にはっきりとした目標がある話である。トヨタの帝国がぼんやりと姿を見せ始めているのだ。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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