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投資信託の一番人気商品がお勧めできない理由3分で読める 荻原博子の今さら聞けないお金の話(1/2 ページ)

» 2016年02月15日 08時00分 公開
[荻原博子ITmedia]

荻原博子の著者プロフィール:

 1954年生まれ。難しい経済やお金の仕組みを生活に根ざして分かりやすく解説し、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。

 バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。

 「どんとこい、老後」(毎日新聞社)、「お金は死ぬまえに使え」(マガジンハウス)、「ちょい投資」(中央公論新社)、「荻原博子式年金家計簿2016」(角川書店)、「10年後に破綻する人、幸福な人」(新潮社)など著書多数。


3分で読める 荻原博子の今さら聞けないお金の話:

 「え、そうだったの!?」

 年金、医療保険、介護保険、教育費、投資。私たちの生活に密接な制度や仕組みについて、きちんと理解していますか?

 本連載では、いま話題になっているけど今さら聞けない、身近なお金に関する仕組みや制度のことを経済ジャーナリストの荻原博子が分かりやすく1から解説していきます。


 皆さんは、いま投資信託の中で最も人気のある「毎月分配型投資信託」をご存知ですか? いま売れている投資信託の約4割がこのタイプといわれています。

 投資信託とは、皆さんから集めたお金を株や債券に投資して利益を出し、それを出資者に分配する商品。この投資信託の分配金を、毎月一定額ずつ出すのが、毎月分配型投資信託です(分配金が隔月のものもあります)。

 この毎月分配型投資信託の元祖は、国際投信のグローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)。「世界中の安定した国債に投資するので安全性が高い」という売り文句で、1997年の12月に売り出され、なんとこの投資信託1本で一時は約6兆円近くの資金を集めました。

 発売当初は、1万円につき毎月40円の分配金がありました。つまり、1000万円投資すれば、月4万円の配当がもらえたということです。この配当は、徐々に減って現在は1万円につき毎月20円になっています。

 それでも、1000万円の投資で毎月の配当が2万円です。それだけの配当を毎月もらえるなら良いと思う人も多いので、これだけ売れているのでしょう。

為替ヘッジがついていないというリスクがある

 では、毎月分配型投資信託は信頼できる金融商品なのでしょうか。それは、基準価格を見るとよく分かります。基準価格とは、投資信託の時価(値段)です。スタート時点に1万円で買えた投資信託が、今、いくらになっているのかというもの。

 これを見ると、前述のグロソブの基準価格は、今年2月10日の時点で5401円になっています。最初に1万円投資した人は今解約すると、解約手数料も含めて5374円になります。なぜ、これほど目減りしてしまったのか。理由は、主に3つあります。

 1つ目は、為替の影響をモロに受けること。2つ目は、毎月配当を出すために原資が目減りしてしまうこと。3つ目は、運用手数料が意外に高いこと。

 1つ目の為替の影響についてですが、毎月分配型投資信託は主に海外の金融商品で運用しているにもかかわらず、ほとんどが為替ヘッジ(先物取引やオプション取引などを利用し、為替変動による資産価値の変動を回避すること)をつけていません。グロソブの場合「海外の安全な債券で運用している」がセールスポイントで、確かに破綻リスクが少ない財務内容の良い国の債券で運用されています。

 ただし、海外の債券を買って運用すれば、必ず為替の影響を受けます。為替の影響を受けるということは、円高になれば目減りし、円安になれば増えるということです。ここ数年の円安傾向の中では少し値を戻していますが、そもそもグロソブが発売された当時の為替レートは1ドル130円前後。その後、円は1ドル80円を下回るところまでいきましたから、その損失は大きかったといえます。

 為替の影響を避けるために為替ヘッジをつければ良いのですが、ヘッジをつけるとその分お金がかかるので、毎月分配型投資信託のほとんどは為替ヘッジをつけていないのです。

photo グロソブの基準価額チャート(出典:三菱UFJ国際投信)
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