ここで1つはっきりしておくが、アップルは一方で、アップルのクラウドサービスである「iCloud」にユーザーが自動バックアップしているデータにはアクセスできる。そしてこれまで、当局の要請によってiCloudにある個人データを提供したケースはいくつもある。
というのも、iCloudにおいては、ユーザーは「自発的」に「個人の意思」でアップルのサーバにデータを預けているのであって、iPhoneのような“個人”のデバイスというのとは扱いが違う。
アップルは、令状の正当性を検討した上でiCloudのデータを提供しているが、データ提供要請のうち4分の3は拒否していると主張する。さらに言うと、2014年にアップルが公表しているガイドラインによると、裁判所の令状によって当局に手渡すiCloudのデータは「SMS、写真、ビデオ、連絡先、音声録音、電話履歴」だけで、「電子メール、カレンダー、第三者アプリのデータ」は提供していないとしている。iPhoneにアクセスできればiCloud以上のデータが得られるため、FBIがどうしてもアクセスしたいのも理解できる。
ただ、このiCloudデータの取り扱いについて、アップルは偽善的だとする声も出ている。FBIも裁判資料の中で、アップルの協力拒否はプライバシー保護が目的ではなく、「ユーザーのプライバシーは大事です!」と見せて商品を売るための「マーケティング戦略」に過ぎないと批判している。実はiCloudでは協力している事実があるからだ。
その流れから、アップルが本当にプライバシーを重要視しているのなら、そもそもiCloudにもアクセスできないようにすべきだとの指摘もある。もっともな意見であるが、アップルにしてみれば、ユーザーがデータを失ったりした場合に備えた、「利便性」を優先したということになる。さらに国家の治安や安全保障もないがしろにしてはいないということにもなる。
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