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» 2016年03月18日 08時00分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:北海道新幹線、JR北海道のH5系電車が2本しか稼働しないワケ (3/4)

[杉山淳一,ITmedia]

鉄道会社は車両を「貸し借り」している

 北海道新聞の記事は「H5系は少ないよ」という事実のみを伝えているけれど「なぜ少ないか」を説明していない。そして箱ダイヤをよく見ると、東京〜新青森を往復するだけで、北海道に上陸しないスケジュールもある。JR北海道の車両だけど、東京から新青森に着いて、青函トンネルに入らずに引き返してしまう。何と無慈悲なことだろう。

 これにはちゃんと理由がある。車両使用料金の精算だ。

 鉄道会社がほかの鉄道会社と相互乗り入れする場合、旅客の運賃は接続駅を境にして精算する。乗車距離の比率で分配すると考えて良い。運転士や車掌は接続駅で交代だ。これは東京や大阪でも同じこと。地下鉄と私鉄の境界駅で乗務員を交代する。原則として、職員は自社の区間だけ担当するからだ。例外として、接続駅を通過する列車や、運行の効率を良くするため、交代しない場合もある。北海道新幹線と東北新幹線も、新青森で交代すると思われる。

E5系(出典:Wikipedia) E5系(出典:Wikipedia

 ところが車両は交代できない。接続駅で相手方の列車に乗り換えを強いたら、それは直通運転ではなくなってしまう。そこでどうするかというと「相手方の車両を借りて、自社の車両で営業する」という解釈になる。地下鉄線内を私鉄の車両が走っていたら、それは「地下鉄が私鉄の車両を借りている」と見なす。もちろんその逆もある。「私鉄が地下鉄の車両を借りる」だ。

 そして、借りたからにはレンタル料を払う必要がある。お互いに相手の車両を借りた距離を計算し、レンタル料金を払う。あるいは相殺して差額のみやり取りする。

 ……ということは、実際は行われない。いちいち全車両のレンタル料を計算するなんて面倒だ。ではどうするか。走行距離で精算する手順になる。お互いの車両たちが相手の路線を走った距離を合計し、同じにすれば精算完了というわけだ。まるで車両の物々交換、走行距離の等価交換である。

 北海道新幹線の新青森〜新函館北斗間は148.8キロメートル。東北新幹線の東京〜新青森間は674.9キロメートル。これは実際の走行距離で、きっぷの計算の基になる距離とは違う。北海道新幹線を1とすると、東北新幹線は約4.5だ。往復で考えるなら、だいたい2:9となる。北海道新幹線は13往復あって、新青森〜新函館北斗をすべてE5系で走らせると約3868.8キロメートルになる。そうなると、JR北海道はE5系の使用料を現金で用意しなくてはいけない。

 そこで、H5系を作り、E5系が北海道新幹線を走る距離とほぼ同じ距離だけ、H5系を東北新幹線で走らせる。東北新幹線は長く、北海道新幹線は短いから、H5系は東北新幹線をたくさん走らせる必要がある。そこで東北新幹線内折り返しというスケジュールになるわけだ。

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