日産自動車の“二律背反”池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2016年04月11日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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日産ファンの心を打てるか

 ここからどう書くかが難しい。筆者は日産に頑張ってほしい。昔日の栄光を取り戻してほしいのだ。だから改革は重要だ。かつてのような技術一本槍の体質ではどうにもならない。

 しかし、改革は往々にして振り子と同様にオーバーシュートする。「走り屋」「チューニング」という言葉が醸し出す古くさいマニアのにおいに忌避感を感じるのも分かる。ただし、企業も人も過去を全てうち捨てて生まれ変わったように豹変することは難しい。自らが長年育んできた能力が未来を開くのであって、内在しない何かが突然全てを支えることは決してない。

多くのファンを生み、今でも日産のイメージアップに貢献しているマーチ12SR 多くのファンを生み、今でも日産のイメージアップに貢献しているマーチ12SR
初代マーチにはマーチターボ、マーチR、マーチ・スーパーターボなどのホットモデルが用意され、日産の入門スポーツモデルとしての役割を果たした 初代マーチにはマーチターボ、マーチR、マーチ・スーパーターボなどのホットモデルが用意され、日産の入門スポーツモデルとしての役割を果たした

 例えば、先行するトヨタがTNGAとともに「クルマの挙動」「高いコントロール性」のようなキーワードを打ち出し始めたことを軽視しない方が良い。トヨタが必死に模索するそれを日産はまだ手中に持っているのだ。全てをうち捨てて進むことは勇気ではない。過去に拘泥することと、過去を大事にすることは違う。

 まずはマーチ・ボレロA30のカタログモデル化を検討してみてはどうだろうか。エンジンの手組みはさすがにやり過ぎだと思うが、それ以外にも日産ファンの心を打つものがきっとあると思う。そしてダイバーシティの対象に退職したエンジニアの活用をぜひ組み込んでほしい。国内マーケットでの日産の活躍を目にする日を楽しみに待っている。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

 →メールマガジン「モータージャーナル」


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