オリジンでちょい飲み なぜ「オリジン弁当」をやめるのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/4 ページ)

» 2016年06月13日 08時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

なぜキッチンオリジンに転換するのか

 同社によれば、キッチンオリジンにモデルチェンジした店は、前年比約125%で推移しており、売り上げが5割上がった店舗もあるとのこと。リブランディング効果が如実に出ている。

 では、なぜキッチンオリジンというユニークな新業態が世に出たのだろうか。その理由を、同社の経営戦略部、斉田善人部長は次のように語る。

 「2001年、私が入社した当時のオリジン弁当は、まだ店舗数が約220店くらいでした。その頃のお客様の男女比率はほぼ同じ。ところが約560店になった2013年の直営店(イオンデリカへの商品供給を除いた路面の店)の男女比は、男性が63%に対して女性が37%になっていました。女性が来なくなっていたのです。これでいいのか、社内で真剣に討議をしたのがスタートでした」

 オリジン弁当は2004年に500店を突破し、06年には首都圏から関西にも進出したのだが、実はもうその頃から既存店の売り上げ、客数はじわじわと右肩下がりになっていた。既存店の前年比が97〜99%であれば「いわれてみれば減っている」といった程度で、不調に見えない。ところが十数年、じわじわと右肩下がりの傾向が続くと、気付けば日販が違ってきてしまう。顧客層を分析してみると、明らかに女性が減少していた。

 がっちりと顧客をつかんで安定している男性客をキープしつつ、女性客をいかに増やすのかが、大きな課題として抽出されたのである。

 斉田部長らは、自ら店に出て、アンケート調査を行った。マーケティングの会社に外注するのではなく、自分たちで生の声を拾うのが肝要との判断だった。200人以上の顧客に聞いたところ、「ピンクの看板が老朽化していて、お店が疲れているように見える」「言葉を選ばずに言うと雰囲気がダサい」と、うすうすとは感じていたが聞きたくはなかった厳しい意見を目の当たりにし、改革すべきとの機運が社内に醸成された。

 「社会背景として、働く女性が増えて結婚する年齢が上がり、食の外部化が進んでいます。夫婦共働きも増えています。残業して夜9時、10時に帰宅するとなると、疲れを取るためには、自炊するよりも、買ってきたもので効率的に夕食を済ませる傾向が強まっています。そうしたニーズに応えて、働く女性に満足していただける店づくりをすれば、客数が回復して成長軌道に乗せられるのではないかと考えました」(斉田部長)。

 仕事帰り夜遅くに駅に着くと、開いている店は限られている。コンビニ、牛丼店、一部のスーパーくらいだ。そこにキッチンオリジンという選択肢が加われば、もっと豊かな食生活になるという提案で、食のインフラづくりに取り組んだ。

photo オリジン弁当をキッチンオリジンに転換していく

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