日産と三菱にシナジー効果はあるのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)

» 2016年06月13日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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強豪ひしめくマーケット

 三菱自動車の生産拠点には、パワートレイン専用工場と完成車工場の2種類がある。よりコストのかかる完成車工場を見ると、国内は岡崎、倉敷、岐阜の3拠点。海外では北米、ドイツ、タイ、フィリピン、中国にそれぞれ1拠点ある。

 現在の三菱の状況を見れば今後の国内販売展望は絶望的だろう。日産も国内販売の見通しは明るいとは言えない。体制を変えて巻き返しを企図しているものの、現状を見る限り進行形で凋落(ちょうらく)の最中。国内工場は両社とも輸出用に稼働させると見た方が良い。

 ルノーの新車販売はほぼ全世界で横ばい、もしくは微減の流れであり、生産設備の増強が必要な状況ではない。となればドイツの工場に興味を持つタイミングではない。やはりASEAN向け生産拠点であるタイとフィリピンが魅力になってくるはずだ。

 一方、日産は北米が順調だ。日産の立場からすれば、三菱の北米工場には利用価値が出てくる。もちろん北米経済の順調な推移が前提になる。

 絵柄をトヨタになぞらえると、もう少し分かり易い。三菱の立場はトヨタにとってのダイハツと同じだ。小型車のスペシャリストとしてASEANへの切り込み隊長を担う。ただし、その実力が拮抗しているかと言えばそういうわけではない。三菱とダイハツの現時点の実力にはかなりの隔たりがあると考えられる。今後20年の激戦区であるインド/ASEANで戦うためには日産が相当に後押しをしないと難しいだろう。会見の中でも益子会長は「日産からの開発面での人的支援に期待する」という発言があったことからもそれはうかがえる。

 これが日産が今回のアライアンスで描いた青写真だ。確かにルートは繋がっているだろう。成功のルートマップが存在しないプランではない。しかし、競合各社の実力を考えると、それはそう簡単な進軍路ではない。青写真が実現できるかどうかは、まだ論じるには早すぎるタイミングだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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