大物IT起業家がハルク・ホーガンを利用してメディアを潰しにかかったワケ世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2016年06月16日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

ホーガンが裁判を続けたことに疑問の声

 まず少し裁判を振り返る。

 ゴーカーは、ホーガンの訴えに対し、次のように自分たちの正当性を述べていた。まずは「表現の自由」だ。米メディアは、米憲法の修正第1条で「ニュース」と考えられる情報を報じる権利が保障されている。有名人の私的な情報もエンターテインメントのニュースとして認識されている。ゴーカーは、ホーガンのビデオも一般市民が関心のある合法的な情報だと主張した。

 そしてホーガンが以前より、自らの浮気などプライベートをメディアで切り売りしていたことから、ゴーカーは今回のビデオもその延長だとした。また、もともと30分の長さだったビデオをニュース価値に見合うよう1分42秒に編集し、性行為自体は9秒のみにしたとも主張した。

 一方でホーガンは「プライバシー侵害」を主張し、そのビデオが250万回再生され、多くの人の目に触れた「恥ずかしさ」は計り知れないと感情に訴えるような主張した。

 両者の言い分は平行線のままだったが、実は2015年に裁判が始まってから、ゴーカー側は何度か示談の提案をしている。ゴーカーが1000万ドルの示談金を申し出たという話もあったようだが、ホーガン側はそうした申し出をすべて断ってきた。

 今となってはフロリダ州の裁判で勝利し、1億4000万ドルの賠償を勝ち取っているが、ホーガン側が勝訴するかどうか分からない裁判の時点で、1000万ドルという破格の示談金を却下するのはおかしいとゴーカー側は考えていた。またホーガンが勝訴した後でも、法外であると指摘されている今回の賠償金は裁判官の権限で1億4000万ドルからかなり減らされる可能性があると見られている。さらに、ゴーカーは大方の予想どおり上訴するとしているが、控訴審でホーガンが敗訴する可能性もあり、そうなればそれこそホーガン側は一銭も手に入らない。そういう状況を分かっていながらもホーガンが裁判を続けたことに訝(いぶか)しむ声も上がっていた。

ゴーカー側は何度か示談の提案をしているが、ホーガン側は断っている(出典:ゴーカー)

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