コラム
» 2016年07月04日 07時30分 公開

日本と大きく違う、デンマークの高齢者像とは高齢者福祉の三原則(3/3 ページ)

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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 実は日本でも、2003年に厚労省の高齢者介護研究会が発表した「2015年の高齢者介護」の中に「元気なうちの早めの住み替え構想」があり、施設でなく高齢者住宅の拡充による福祉政策が謳われたが、依然として施設の開設が中心になっているのは、高齢者像の設定に大きな差があるからだ。

 国が進めている地域包括ケアの『尊厳の保持と自立生活の支援』という目的もデンマークとよく似ているが、これに対する理解や共感が広がらないのは、一般に共有されてしまっている「助け支える対象」という弱々しい高齢者像との乖離(かいり)があるからだろう。

 次に、「施設」と「住宅」の線引きを明確にする必要がある。現状は、普通の自立生活をするための設備・機能がないのに、住宅風のスペースを作っただけで『住宅型・老人ホーム』、生活相談と安否確認さえあれば『サービス付き高齢者住宅』と呼称できてしまう。

 これら、施設を“住宅っぽく”しただけでは、デンマーク基準なら「施設」である。普通の住宅レベルの生活機能、十分な広さ、かつ必要なケアを受けられる環境にある住まいに限定して「高齢者住宅」と規定すべきだ。施設と住宅の線引きが曖昧な状態では、高齢者が安心して住み替えることなどできない。また、デンマークでは現役時代に住んだ家を「(高齢者にとって)不適切な住宅」としているのも注目に値する。

 高負担・高福祉を目指そうというのではない。「良質な高齢者住宅」は、高齢期の尊厳ある自立生活を実現しやすいだけでなく、事故・病気・孤独などのリスクが減るため介護予防の効果がある。

 つまり、「良質な高齢者住宅」によって健康寿命が延びるので、医療・介護費用を削減できるし、施設の入所者も減らせるから社会保障費の削減が期待できる。社会保障費を適正化し、同時に活力ある超高齢社会を作るためには、「良質な高齢者住宅の整備と、元気なうちの早めの住み替え」という新たなアプローチを積極的に推進すべきだ。施設不足や介護職員不足への対応、医療費・介護費の自己負担率の引き上げなどは、付け焼刃にすぎない。(川口雅裕)

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