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» 2016年07月15日 08時00分 UPDATE

セミナー「小説投稿サイトの現在」:“出版不況の中でも売れる本”を生み出す「ウェブ小説」の仕組みとは? (2/3)

[青柳美帆子,ITmedia]

圧倒的なユーザー数で広告モデルを貫く「小説家になろう」

 「小説家になろう」は、04年に出発した小説投稿サービス。当初は個人サイトとして運営していたが、口コミで徐々に利用者が増加して10年には法人化。ヒナプロジェクト運営の法人サイトとなった。

 登録者数は約80万人、投稿作品数は約40万作品。月刊アクセス数は約14億PV(ページビュー)で、月間に約700万人が利用する。「ウェブ小説といえば小説家になろう」と思われるほど存在感のあるサービスだ。利用者からは略して「なろう」と呼ばれていることが多い。「なろう系」「悪役令嬢」「婚約破棄」といった独自の文化が自然発生し、ユーザー間で定着しているのが特徴だ。

 11年から書籍化するタイトルが増え始め、16年までに計1544作が書籍になっている。『魔法科高校の劣等生』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『ログ・ホライズン』など、アニメ化した作品も多い。

 それだけの作品があれば、マージンで大いに潤うのでは――と思うところだが、ヒナプロジェクトは書籍化に際して一切マージンを受け取っていない。あくまでも書籍の相談は作者と出版社の間で行うべきという考えのもと、タイアップやバナーなどの広告収入だけで運営を行う。

 「IP(創作物)創出のきっかけになるプラットフォームであり続けたい」(ヒナプロジェクトの平井幸取締役)

「小説家になろう」トップページ

メディアミックス積極攻勢「エブリスタ」

 「エブリスタ」は、DeNA提供の「モバゲータウン(現Mobage)」内の小説コーナーが前身。いわゆる「ケータイ小説」の投稿が多いサービスだった。10年にNTTドコモとDeNAの合弁会社としてエブリスタが設立され、サービスを開始した。

 6年間の累計作家数は141万人、出版書籍数は550。サービスを利用するユーザーは、スマートフォンが85%、フィーチャーフォンは7%と、圧倒的にモバイルユーザーが強い。

 「もともとはフィーチャーフォンユーザーが多かったが、遠くないうちにスマホが強くなるのが予想できたため、早めのスマホシフトが成功した。閲覧だけではなく、執筆も半分以上がスマホで書いている」(エブリスタの芹川太郎取締役)

 マネタイズのモデルは掲載小説の二次利用。書籍化のほか、コミカライズ、映像化、漫画原作化……と積極的にメディアミックスを行う。映像化に関しては、自社で投資をしているものも。また、コンテンツを個人が有料で販売できる仕組みがあり、そのマージンでも収益を得るというモデルをとっている。

「エブリスタ」トップページ

KADOKAWAという母体を生かす「カクヨム」

 今年2月にサービスインしたばかりだが、注目を集めているのが「カクヨム」。KADOKAWAとはてなが運営するサイトで、登録ユーザー数はオープン後4カ月で7万人、約4.3万作品が投稿された。

 収益化のモデルは、「カクヨム」発の書籍出版。「カクヨム」で生まれた優れたコンテンツを、KADOKAWAの他編集部で書籍化して、その売り上げでマネタイズを図る。“紙の本を出版する”ことに関する膨大なノウハウと、どんなものでも出版できる巨大な規模の母体を持つKADOKAWAならではの戦略だ。

 初年度は書籍出版を20点ほど予定していたが、現時点で26作品の書籍化が打診されている。中でも書籍化第1号となる『幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について。』やネット上で話題を集めた『横浜駅SF』には期待が集まる。

 「今後はKADOKAWA外部との連動も視野に入れている。その場合の収益モデルについてはまだ明かせることが少ないが、他出版社とのコラボでカクヨム自体の知名度が上がればいいと考えている」(「カクヨム」の萩原猛編集長)

「カクヨム」トップページ

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