ではトランプが勝てないと言われる理由はどこにあるのか。
米国の有権者全体について見ると、トランプが大統領になるためには大きな壁がある。非白人の票だ。今回の大統領選挙は史上最も人種・民族の幅が広いものになるとみられており、非白人の票が非常に重要になる。米ピュー研究所によれば、2016年は有権者の3分の1近く(31%)がヒスパニック系(中南米)、黒人系、アジア系、またはそのほかの少数派の人種・民族である。その割合は前回選挙(2012年)の29%よりも増加しているが、その背景には米国生まれのヒスパニック系がどんどん成人していることが挙げられる。
ご存じの通り、トランプはメキシコ人を「殺人者」「レイプ魔」と呼び、メキシコとの国境には壁を作ると公言しているので、彼がヒスパニック系から嫌われているのは言うまでもない。またイスラム教徒を入国禁止にすると言ったり、移民そのものに否定的な発言をしている。非白人からの人気はかなり低い。
事実、ヒスパニックを対象にした世論調査では、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官への支持は67%。一方のトランプ支持は19%に過ぎない。またヒスパニック系に限らず、黒人やアジア系などを含めても、クリントンはトランプより20ポイントも支持率が高い。ちなみにもともと民主党支持者が多い黒人の8〜9割は、トランプに不支持を示しているとの調査もある。
トランプはまた、勝利するのに欠くことのできない別の層からも嫌われている。女性である。米国では、女性の有権者は全体の52%に達し、投票率は男性よりも高く64%ほどになる。トランプは女性からの人気がかなり低く、2016年3月の調査では、女性有権者の73%がトランプにマイナスイメージをもっていることが判明している。しかもこの数は2015年12月の59%から悪化の一途にある。
トランプを指名候補にした共和党支持者ですら、女性の47%はトランプに否定的で、好意的に見ているのは49%だ。民主党では、好意的に見ている女性はたったの7%で、89%が否定的な見方をしている。
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