この連載は、書籍『「売れる商品」の原動力―インナーブランディングの思想』(論創社)から一部抜粋、再編集したものです。
元電通社員として、数多くの新商品の開発・事業戦略の構築に関わった著者が、キーワード“誇りと愛着”を駆使して、ジェクトワン・ニビシ醤油・伊那食品など成功企業の秘密を解明。
企業や地域といった組織が、永続的な発展に向けて取り組むべきことを分かりやすく紹介します。
前回、ブランド・ビジョンを構成する7つの要素を紹介しました。
1から4は、いわば「自身」にかかることがらでした。これに対して5から7は「相手」にかかることがらになっていきます。まずは、5の「ターゲットの価値観」です。
誰かの顔を思い浮かべることで、幸せを感じる。自分のモチベーションが上がる。そうした経験は、きっと誰にでもあると思います。人は、自分以外の誰かを幸福にしていくことで、自分が幸福になっていくものです。このことは、近年の「幸福学」の領域でも多くの専門家が指摘しています。
同じように、企業も“誰かの幸福に貢献できている”と実感するときに、自分たち自身の幸せを実感し、モチベーションを上げることができます。自分たちの会社で、自分たちの強みを生かして、「こういう商品を作っていこう」「こういうサービスを提供していこう」「こういうブランドに成長させていこう」と考える際に描くべきものは、幸せになっていただく“誰かの顔”なのです。
この“誰かの顔”は、できるだけ具体的である必要があります。しばしば陥りがちな例を挙げると、例えばある商品なりサービスのターゲットについて尋ねた際に「うちは、20代から30代の女性」というような答え方をされるケースがあります。しかし、こういう対象の設定はよくありません。
なぜなら、「20代から30代の女性」というのは、人によって思い浮かぶ人物像があまりにまちまちだからです。ある人は高級志向なエレガントな女性をイメージするかもしれないし、別の人は庶民的な女性を想像するかもしれません。バリバリ仕事をしている女性なのか、仕事を持っていない女性なのかも判然としません。大人っぽい女性なのか、まだ学生なのか、独身なのか、子育てに追われているのか、イメージする像はまちまちでしょう。
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