ダイハツの女性仕様車にまだ足りないもの池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2016年10月03日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

基本機能を疎かにしていない

 ダイハツが説明する改善ポイントは大きく分けて2つに分類される。1つはこれまで述べた女性のための機能だ。数え上げれば、ブラインドモニターだとか、洗えるシートカバーだとか、数多くのデコレーションパーツなどのオプションの充実もあるが、言うまでもなく、大事なのはクルマとしての基本性能の部分だ。ムーブ・キャンバスの重量はFFモデルで910キログラムから、4WDモデルだと970キログラムまである。スライドドアは重いのだ。これをちゃんと走らせようとすればボディの補強は必須だ。

 主にリヤフロアを補強し、乗り心地と操縦性を向上させるためにダンパーの低速域でのフリクションを低減し、オイル通路のバルブ特性をチューンして応答性を高めた。ステアリングは女性の腕力を考慮して操舵力のアシストを増やし、中心付近のフリクションを低減。併せてセルフセンタリングを最適化して直進性を向上させた。あんまり並べても読んでいて飽きるかもしれないが、ヘッドランプも軽自動車初のステアリング連動LEDランプを採用(最上位グレードのみ)し、ぶつからないブレーキも廉価グレードを除き標準装備して安全性を高めている。

 クルマの基本性能はあり物のままで……とやらなかったことはもっと評価されるべき姿勢である。

 乗ってみてどうだったのか? 全体として印象は良かった。感心したのは、高速の直進安定性と騒音の少なさだ。静かで広くて真っ直ぐ走る。ステアリングは少し軽すぎると感じる人もいるだろうが、異様な感じまではしない。エンジンはターボなしの軽としては頑張っていると思う。

 トランスミッションはCVT一択なので、加速しようと踏み足すとズルンとギヤ比を下げてしまうところが残念だが、まあCVTである以上仕方ない。仮にトルクの大きいターボモデルがあれば、多少はセッティングのしようもあるのだろうが、ターボの設定はない。「重量があるだけにギヤ比をホールドさせたままにするのは難しい」とエンジニアは素直に認めていた。

 ペダルオフセットはある。オフセット量は軽の横幅規制を考えれば仕方ないと言えば言えるくらい。もう一点、ブレーキの効きは十分だが、パッドが当たったあたりで少し効きが唐突で神経質な感じがある。致命的なものではないが、慣れるまで気を遣わされるだろう。

 さて、一番気になったのはばねの硬さである。交差点をゆっくり曲がるような速度で路面の荒れをゴツゴツと拾う。せっかくダンパーにお金をかけてもばねが硬ければ「素晴らしい乗り心地」にはならない。

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