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» 2016年10月03日 06時30分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:ダイハツの女性仕様車にまだ足りないもの (4/4)

[池田直渡,ITmedia]
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 試乗から戻ると、最後の枠だったせいか、4人のエンジニアに囲まれた。取材しに行ったはずが、こちらが聞かれる側になった。なので、ここまで書いたことを率直に述べた。本当に真面目な人たちだ。ものすごい勢いでノートを取りながらそれを聞くのである。

サンバイザーの縦寸を見れば、どれだけルーフが高いか見当が付くはず サンバイザーの縦寸を見れば、どれだけルーフが高いか見当が付くはず

 丈を少し縮めた方がいいのではないかという指摘に対する答えはこうだった。「スライドドアで乗降性を高めようと思うと、ルーフが高い方が……」。なるほど、それはそうかもしれないが、そこを解決してこそ技術である。スライドドアに相応しい乗降性を確保しても、乗り心地で失望させれば、最初に立てた「女性が喜ぶ」という目標に届いていないことになる。PDCAサイクルの後半分、評価と改善のステップが本当に機能するのかが、これから問われる。

 8月1日をもって、ダイハツはトヨタの完全子会社になった(関連記事)。トヨタが公表してきた戦略を聞く限り、世界ナンバーワン自動車メーカーの小型車開発を一手に担うのが、これからのダイハツの役割だ。筆者は常々、向こう20年で新車の販売台数は、5000万台増えて現在の1.5倍になると言っている。新たなマーケットとなるインド、ASEAN、中国の非富裕層が買うクルマはMIRAIでもテスラでもない。70万円以下の小型車である。地球環境を考えれば、激増するクルマには「低環境負荷」であること、「人々の生活を豊かにできる」ことが、否が応でも求められる。できなければマーケットの成長は鈍化する。環境税がどんどん増えて、新興国の人々にとってクルマは手の届かないものになる。

 ダイハツはトヨタ・グループの小型車開発を任されたことにより、地球を救い、新興国の人々を幸せにする義務を果たさねばならないことを肝に銘じてほしい。それは羨ましいほど大きな夢だと思う。技術の力で地球を救う。そう言われて奮い立たないエンジニアはいないと思うのだ。

 だから技術の向かうべき目標を開発チーム一丸となって共有してほしい。「女性が喜ぶ」という目標に対して「それはドア担当と内装担当の受け持ち」とするのではなく、ブレーキの担当もサスペンションの担当も、それぞれの担当領域で「女性が喜ぶ」ために自分の領域でできることはやりきったかということをもっともっと追求してほしい。それが「世界の人々を幸せにする」という目標になったとき、トヨタ・グループが飛躍できるかどうかを決めるのではないかと思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

 →メールマガジン「モータージャーナル」


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