「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」……だけど、タフであり続けることも、優しくあり続けることも、簡単ではない。
ほとんどの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。ニュースやデータからコンビニで何が起きているのかを、推理して、調査して報告します。筆者は大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?
コンビニの仕事の1つに「前出し」という大事な作業がある。平たく言うと、棚の奥にある商品を前に出してキレイに並べることだ。
人の第一印象は出会って数秒で決まると言われているが、コンビニの商品も同じ。棚に雑然と置いているよりも、きちんと整列している商品のほうがよい印象を与えるのは言うまでもない。
今回は、コンビニの商品の並べ方が売り上げにどう影響するのかを考えてみよう。
前出しをすることで、商品の見栄えがよくなるだけでなく売り場もキレイに見せることができる。読者の多くは「コンビニはいつ行ってもキレイだなあ」というイメージをお持ちだろうが、それは商品がきちんと並べられているからだ。
実は、商品が置かれている棚は掃除がしにくい。よく見ると、奥のほうにホコリがたまっていたり、開店から何年も経っている店は棚板の塗装がはがれていたり、傷がついていたりするのだが、商品を棚にビシッと並べることでそれらを目立たないようにしているのだ。
もう1つ、前出しには万引き防止の効果があるとも言われている。真偽のほどは定かではないが、コンビニ業界の通説として「商品がきちんと並べられていると万引きされにくい」というのがある。
では、商品を前出ししてキレイに並べれば売り上げは伸びるのか。筆者が本部社員だったころ、先輩社員が売り上げの悪い店のオーナーに「前出しして売り場をキレイにしないと売れるモノも売れないですよ」とエラそうに言っていたが、全くのデタラメである。おにぎりや弁当などが顕著な例だが、売り上げの高い店は商品を棚に並べるとすぐに売れるので、前出ししたキレイな状態が続くことはほとんどない。ということはつまり、よほど散乱していない限りは前出しが売り上げに大きく影響しているわけではないのだが、見た目をキレイにしてお客さんによい印象を与えるためにも妥協は許されない作業であると言えよう。
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