ご当地フィギュア「諏訪姫」シリーズが、20万体超のヒットとなった理由スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2016年11月08日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

逆風の中でも「諏訪姫」は好調をキープ

 そのような「逆風」の中で、「諏訪姫」は好調をキープしている。

 公式サイトの「イベント情報」を見ても、毎月のように「こどもまつり」「ふれあい市場まつり」など地域のイベントに引っ張りだこ、さらに夏休み期間は「富士見町高原のミュージアム」で、初の企画展「すわひめパラドックス」も開催された。先日も諏訪市が全国のコンビニで戸籍証明書を発行できるサービスのPRイベントで、諏訪エリア観光特使を務めるオリラジ・藤森慎吾さんと出演。「チャラ男」キャラの藤森さんに逆プロポーズをするという寸劇を披露して、メディアに多く露出した。「大健闘」といっていいほどの活躍ぶりだ。

 では、スポットライトがあたることなく人知れず消えていく「ご当地萌えキャラ」も少なくない中で、なぜ「諏訪姫」は人々から愛され続けることができているのか。

 おそらく、萌えキャラ好きの方たちからすれば、キャラクターのビジュアル、性格、世界観などさまざまな意見が出てくると思うが、個人的には「諏訪姫」が生まれた「目的」が大きいのではないかと考えている。

 「ご当地萌えキャラ」の多くは、キャラクタービジネスをや版権ビジネスを生業(なりわい)とする地元企業や広告代理店が地域振興や観光PRを「目的」として生み出している。

 しかし、「諏訪姫」は違う。

 このキャラクターを考案した諏訪市の株式会社ピーエムオフィスエーは、従業員20名ほどで、自動車向けプラスチック部品の金型製造を主力とする企業だった。だが2008年のリーマンショックで、自動車向けの仕事が激減。そこで社長の山口晃氏が異業種への転換を求め、探しあてたのが、ルアーフィッシングや、プラモデルやフィギュアという「ホビー市場」だった。

 『都内の技術展示会で知った釣り具メーカーに営業をかけ、09年秋からイカ釣り用のルアーを受注するようになりました。これがいまや売上高の半分程度を占めます。ことし4月からは「PLUM(プラム)」という自社ブランドをつくり、ゲームに登場するキャラクターのフィギュアやプラモデルの製造販売を始めました』(信濃毎日新聞 2010年10月14日)

 だが、これでは自動車の下請けがホビーの下請けに変わっただけで何も変わらない。『これからは自社ブランドを持たなければ生き残れない』(同上)という強い思いから、オリジナル商品の開発に乗り出す。

 そうして2011年7月に販売されたのが、「諏訪高島城」(200分の1スケール)。同社の高精度の金型技術を駆使したことでも高い評価を受けたが、もうひとつ話題になったのが、城とセットにしたオリジナルキャラクターのミニフィギュアだ。

 もうお分かりだろう、それこそが「諏訪姫」だ。

 その後、「諏訪姫」は1年で2万個以上を販売。その知名度に目をつけた諏訪市が「公認キャラクター」に決定し、現代に至るというわけだ。

諏訪市の公認キャラクター「諏訪姫」

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